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ペルシャの神話
目次
- 創世
- ミスラ
- 牛から生まれた珍しい動物
- 国々の創造
- 病気退治
- 人間創造
- 最初の男女の仕業
- 霊酒ハオマ
- 天国と地獄
- ゾロアスターとその迫害
- 最初のペルシャ王
- 火の起源
- 王者を呑む怪馬
- 恐ろしい冬
- イマの罪
- 奇怪な接吻
- 薄命の王者
- 夢の予言
- 予言の実現
- 三人の王子
- ミヌーチールの復讐
- 白髪の幼児
- 王位を奪うもの
- ザールの奮戦
- 二羽の白鷹
- 白魔の災い
- 七つの難業
- 昇天の企て
- 父子の血戦
- 多難の小王子
- 魔城の攻めくらべ
- ツーラーン王征討
- 消える怪魔
- 悲惨な恋
- 魔女の接待
- 若い英雄と讒言
- 後の七つの難業
- 黄銅城攻め
- 親子の反目
- 大勇士の最後
書籍
- 「シャー・メーナー」作者:フェルドウシー 年代:980年から30年にわたって編成された。
- アヴェスター
神・人名
| 名前 | 概要 |
| アフラマズダ | 善の神 |
| アンリ・マンユ(アングラ・マイニュ) | 悪の神 |
| ジャヒ | 女性の悪魔 |
| アメシャ・スペンダ | アフラマズダに率いられた天使の群の一つ |
| ヤザタ | アフラマズダに率いられた天使の群の一つ |
| アパオシャ | 旱魃の悪魔 |
| アメレタート | アメシャ・スペンタの一員 |
| ゲーウシュ・ウルヴァン | 死んだすべての動物の種を含む牛から抜け出した霊魂 |
| チシュトリア | 東の首領、夏の間大地に水を恵むことをつかさどる |
| サタヴェース | 西の首領 |
| ヴァナンド | 南の首領 |
| ハプトークリング | 北の首領 |
| ミスラ | 小刀と松明をもって無花果の木の下の岩から生まれた。 |
| マートラ・スペンタ | アフラマズダに病気退治を頼まれたが力がないと言って断った天使。 |
| ナイヨーサンガ | アフラマズダの日頃使者として使われている。天国に行った人間の霊魂もそばにおいて使うことができる。 |
| アイルヤマン | 病気退治のため九種の馬、駱駝、牛、家畜、木の枝、畦で病気を追い払った。 |
| ガヤ・マレンタン | 最初の人間 |
| スペンタ・アームマイチ | 大地の保護霊 |
| マーシア | ガヤ・マレンタンから生まれた男 |
| マーシオーイー | ガヤ・マレンタンから生まれた女 |
| スリタ | 人類最初の医者として霊酒ハオマを造った。 |
| クシャトラ・ヴィルヤ | スリタに黄金の小刀を渡した |
| ヴィーラーフ | 現世で善い行いをしたためやすやす天国へ行けた男。 |
| スラオシャ | 掟への服従 |
| アータル | 火の意 |
| プールシャスパ | ゾロアスターの父 |
| ヅグゾーヴァ | ゾロアスターの母 |
| ブーイチ | アングラマイニュがゾロアスターを殺すために遣わした悪魔 |
| ゾロアスター | ゾロアスター教の創始者 |
| ガヨーマルト | 最初のペルシャ王 |
| シヤーマク | ガヨーマルトの息子。アーリマンに倒される。 |
| アーリマン | ガヨーマルトを妬みの目で見ていた。 |
| ホーシャング | シヤーマクの息子。ペルシャ王。アーリマンを倒す。 |
| タームーラス | ホーシャングの次の王。頭が良い |
| ギウー | ホーシャング王に生け捕りにされた悪魔のため戦った悪魔の首領 |
| フィルダウシー | イマをたたえて歌った大詩人 |
| イマ | 囲繞地を造った王(リグヴェーダのヤーマと同一)。父はヴィーヴァングヴァント。(ヤーマの父はヴィヴァスヴァント) |
| イマク | イマの妹 |
| アジ・ダハーカ | 第二期のペルシャを支配した。イマを引き裂いた怪蛇。 |
| ザーハーク | アラビアの王 |
| イブリース | ザーハークをだました妖精 |
| ジャムシード | ザーハークによってペルシャを追われた王様。(イマと同一人物?) |
| ギューレン | ザーブリスターンの王様。娘がジャムシードと結婚した。 |
| ファリーズーン | ザーハークを討伐した次代王 |
| アブチーン | ファリーズーンの父 |
| カーワ | 鍛冶屋。牝牛の矛を造った |
| シャリナーズ | ジャムシードの妹。ファリーズーンの妃となる。 |
| アルナワーズ | ジャムシードの妹。ファリーズーンの妃となる。 |
| クンドラブ | ザーハークの大臣 |
| サルム | ルームを貰ったファリーズーンの子、王子。兄弟の領地分配に不服を申し、ツールにイーラジを殺すように仕向けた。 |
| ツール | ツーラーンを貰ったファリーズーンの子、王子。サルムにそそのかされイーラジを殺す。 |
| イーラジ | イランを貰ったファリーズーンの子、王子。ツールに殺される。 |
| サルブ | ヤーマンという国の王、ファリーズーンの三人の子の妃の父 |
| ジャンダル | ファリーズーンの家来。三人の王子の妻を探した。 |
| パシャング | イーラジの娘と結婚した男。 |
| ミヌーチール | パシャングの子。ファリーズーンの次のペルシャ王。 |
| サーム | ファリーズーンの老勇士、ザールの父 |
| ナリーマーン | ファリーズーンの老勇士、サームの父?シパンド山の魔法城で死んだ。 |
| ナウダル | ミヌーチールの息子 |
| ザール | サームの子。生まれた時から白髪で、幼少期はシームルグに育てられた。 |
| ミーラーブ | カーブルの酋長。ザーハークの子孫。 |
| シーンズクト | ミーラーブの |
| 妻ルーダーバ | ミーラーブの娘。ザールと結婚する。 |
| ルスタム | ザールとルーダーバの息子。誉れ高い勇士となる。 |
| アフラーシヤーブ | パシャングの子。 |
| イグリーラス | アフラーシヤーブの弟。ライの地を治めていた。 |
| カーラン | ペルシャ軍の武将 |
| クバード | 老勇士、バールマーンに倒される |
| バールマーン | ツーラン軍の武将 |
| シャマーサース | ツーラン軍の武将 |
| カーザルアーン | ツーラン軍の武将 |
| ツース | ナウダルの息子 |
| グスタハム | ナウダルの息子 |
| ザウ | アフラーシヤーブのあと五年ペルシアを治めた。ファリーズーンの子孫 |
| ガルシャースプ | ザウの王子。ザウのあとペルシア王となる |
| ラクシュ | 悪魔の血を受けた荒馬。ルスタムの愛馬。 |
| アリバース | ツーラン軍の武将 |
| カイ・クバード | ファリーズーンの血を引く、アルブールズ山に棲んでいたがルスタムに連れられペルシア王となる |
| カイ・カーウス | カイ・クバードの長子。次王 |
| ウーラード | ルスタムにとらえられてマーザンダラーンの道案内をした。その後ルスタムの推薦でマーザンダラーンの総督となった。 |
| アルジャング | マーザンダラーンの白魔の部下、悪魔の首領 |
| カラーフール | マーザンダラーンの猛将。ルスタムと手の摑み比べをした。 |
| スーダーバ | ハーマーヴァラーン王の娘 |
| グーダルズ | アームルにカイ・カーウスを助けに行く時王を厳しく諫めた。カーワの子 |
| ターミーナ | ルスタムの妻、サマンガーン王の娘 |
| スーラーブ | ルスタムとターミーナの子 |
| フーマーン | アフラーシヤーブの許の二人の戦士 |
| ハジール | ペルシアの戦士、スーラーブに捕まる |
| グルダーフリード | ハジールの娘 |
| ギーブ | ペルシアの戦士 |
| シーウェル | ファリーズーンの血統を受けた娘。カイ・カーウスの妃となる |
| スーダーバ | カイ・カーウスの妃の一人。シヤーウシュに言い寄る |
| シヤーウシュ | カイ・カーウスの息子 |
| ガルシーワズ | アフラーシヤーブの弟 |
| ピーラーン | アフラーシヤーブの武将 |
| ジャリーラ | ピーラーンの娘シヤーウシュの妻 |
| ファランギース | アフラーシヤーブの娘シヤーウシュの妻 |
| カイ・クスラウ | シヤーウシュとファランギースの息子 |
| ピールサム | シヤーウシュの親友 |
| クルバード | ピーラーンの家来 |
| ファリーブルズ | カイ・カーウスの息子 |
| ファルード | カイ・クスラウの兄 |
| ジャリース | おそらくシヤーウシュの妻、ファルードの母 |
| ビーザン | ギーブの子 |
| バーラーム | ペルシアの武士 |
| ルーハーム | ペルシアの武将 |
| カームース | ツーラーン軍の他国の同盟者。カシャーンから |
| シャングル | ツーラン軍の同盟者。サグサールから |
| アシュカブース | ルスタムにツースの命令で馬を貰いに来たと矢で殺されたツーラーンの武将 |
| ブーラードワンド | ツーラーンの隣国の戦士、ルスタムと渡り合うが死んだふりをして生き延び逃げた。 |
| アクァン | ルスタムに退治された怪魔 |
| マニーザ | アフラーシヤーブの娘 |
| グルギーン | ペルシアの老勇士 |
| ファラーマルズ | ルスタムの子 |
| バルタ | 元アフラーシヤーブの家臣でルスタムに仕えている戦士 |
| グシュタースプ | |
| アルジャースプ | チーンとマーチーンとの王 |
| ザルズーシュト | 予言者ゾロアスター |
| ジャーマースプ | グシュタースプの大臣 |
| アスファンディヤール | グシュタースプの子、次王 |
| ザリール | グシュタースプの公子、ビーディラフシュに倒される |
| ビーディラフシュ | アルジャースプの手下の魔人、ザリールを倒しアスファンディヤールに倒される |
| グラズム | グシュタースプの戦士 |
| バーマン | アスファンディヤールの息子 |
| グルグサール | チーン王の悪魔族の勇士。アスファンディヤールに捕まりチーンまでの道案内をさせられる |
| ビシュータン | アスファンディヤールの弟 |
| ルーラースプ | カイ・クスラウが王冠をあたえようとした。(記事薄い) |
| ザワーラ | ルスタムの弟 |
| ヌーシュ・アーザル | アスファンディヤールの末子 |
地名・山等
| 名前 | 別表記 | 概要 |
| | |
| ルーム | | ルームはペルシア語で「ローマ」? |
| ツーラン | ラテン文字: Tūrān, ペルシア語: توران | ペルシア語で中央アジア付近 |
| イラン | ペルシア語: جمهوری اسلامی ایران ペルシアともいう | |
| ザーブリンスターン | ダリー語表記 زابل | アフガニスタン南部の州、ザーブル州、州都はカラート |
| ヤーマン | 不明 | |
| マーザンダラーン | ペルシア語: استان مازندران | イラン北部の州、州都はサーリー |
| カーブル | ペルシア語: كابل, ラテン文字転写:Kābul | アフガニスタン東部の州 |
| ライの地 | | |
| イスタクル | | ペルセポリス付近? |
| ハーマーヴァラーン | | |
| アームル | | |
| ムーラン | | |
| サマンガーン | | |
| チンの国 | | |
| クータン | | |
| ブカーラー | | |
| カシャーン | | |
| サグサール | | |
| イルマーン | アルメニア | |
| バルク | | |
| 山 |
| ハラ・ベレザイチ山 | | |
| シパンド山 | 不明 | 魔法城がある |
| アルブールズ山 | | |
| ハマーワン山 | | |
| クヴァーリズム山 | | |
| アスナヴァンド山 | | |
| レーヴァンド山 | | |
| 河川 |
| ジフーン河 | アラビア語:جيحون, Jayḥūnのこと? | |
| 野原 |
| ダクウィーの広野 | | |
家計
【ファリーズーンの家系】
ファリーズーン=シャリナーズとアルナワーズ
イーラジ サルム ツール
イーラジの娘=パシャング
ミヌーチール アフラーシヤーブ イグリーラス ガルシワーズ
ナウダル
ツース グスタハム
ザウ(ファリーズーンの子孫)
ガルシャースプ
カイ・クバード(ファリーズーンの子孫)
カイ・カーウス=シーウェルとスーダーバ
シヤーウシュ=ファランギース(アフラーシヤーブの娘)とジャリーラ(ピーラーンの娘)とジャリース?、ファリーブルズ
カイ・クスラウ、ファルード
【ナリーマーンの家系】
ナリーマーン
サーム
ザール=ルーダーバ(ミーラーブ[ザーハークの子孫]=シーンズクト)
ルスタム=ターミーナ(サマンガーン王の娘)、ザワーラ、シャガード
スーラーブ、ファラーマルズ
【カーワの家系】
カーワ
グーダルズ
ギーブ
ビーザン
【グシュタースプ以後】
グシュタースプ
アスファンディヤール、ザリール、ビシュータン
バーマン、ヌーシュ・アーザル
王権の推移
【王権の推移】
ガヨーマルト
↓
ホーシャング
↓
タームーラス
↓
ジャムシード
↓
ザーハーク
↓
ファリーズーン
↓
ミヌーチール
↓
ナウダル
↓
アフラーシヤーブ
↓
ザウ
↓
ガルシャースプ
↓
カイ・クバード
↓
カイ・カーウス
↓
カイ・クスラウ
↓
グシュタースプ?
サームの領地(ミヌーチールからザーブリンスターン、カーブル、インドの総督とされた。)
ザーブリンスターン
カーブル
インド
創世
九千年の戦い
初めの三千年はアフラマズダの望みがかなう。次の三千年は二人の望みが対立する。最後の三千年の間にアングラマイニュはアフラマズダに征服されるのを尊い神が知っている。
初めの三千年:無形の霊:潜める力
次の三千年:形あるもの、天空、星(648万)を天空の四方へ、月そして太陽
アフラマズダ:様々なものを創造する
アフラマズダ:星を四方に配り四人の頭に支配させる
東:チシュトリア
西:サタヴェース
南:ヴァナンド
北:ハプトークリング
アングラマイニュ:その間眠っていた。
アングラマイニュ:ジャヒの3度の呼びかけで目覚める。
アングラマイニュ:ジャヒに望まれ15歳の若い男となり天界へ。
アングラマイニュ:惑星を作り、星座の首領と戦った。
アフラマズダ:アメシャ・スペンダやヤザタで応戦した。
戦いは昼九日、夜九日行われた
そのうちに大空に堅固な塁壁ができアングラマイニュは引き返した
アフラマズダ:その後も創造を続け、数々の水の流れを作った
ブールカシャ海:水の流れが一つに集まってできた。アルブールズ山の南の果てにあり大地の三分の一の大きさ、千の湖の水を含むと信仰される。
アルドヴィ・スーラ・アナーヒタ:「潤いて強くかつ穢れないもの」あらゆる水の源泉
アンリマンユ:アパオシャを作りチシュトリアのところへ赴かせ、水の流れを邪魔させる。
チシュトリアとアパオシャ:戦ってアパオシャの力が尽きる
アフラマズダ:大地を作り、チシュトリアに雨を降らせる。邪悪な生物の毒を洗い流し33種の陸を作り、7つに分ける。
アングラマイニュ:地震を起こし、大地に山ができた。
アルブールズ山:一番初めにできた山。この山のあと大地のところどころが動き大きな木のように雲を貫く程聳え立った。
アフラマズダ:様々の草木をこしらえる。
アメレタート:尊い神の仰せによりあらゆる植物を砕いて水に溶かした。狼星はその水を大地にまき散らし、いたるところに草木が芽を出した。この一万の草木はアングラマイニュの一万の病気を追い退ける力がある。あらゆる種を含む樹はブールカシャ海の中にある
ガオケレナ:牛の角の意味で、あらゆる草木の首領。「あらゆる種を含む樹」のそばにあり、口にするものは不滅の命を得る。
アングラマイニュ:魔のトカゲを作る。魔のトカゲはガオケレナの根を噛み枯らそうとしている。
アフラマズダ:十尾のカル魚を作る。トカゲが根を噛もうとするととびかかる。
アフラマズダ:火を作る。
アングラマイニュ:火が燃えるときは煙が立つようにした。
アフラマズダ:動物を作る
すべての動物の種を含む牛:素晴らしく強くて美しい
アングラマイニュ:牛のそばへ
アフラマズダ:ビーナーク(霊妙な果実)を牛に食べさせる。
アングラマイニュ:牛を凄い目で見据えて、病にかけ殺す。
牛の霊魂ゲーウシュ・ウルヴァン:アフラマズダのところへ。一千人の人間が一度に叫びだしたようにアングラマイニュの悪を嘆く。アフラマズダは救世主を遣わすといったが時がまだ来てないと伝える。
牛の霊魂ゲーウシュ・ウルヴァン:星の世界でも大声で叫ぶ。
アフラマズダ:時期が来たので牛の霊魂にゾロアスターを送り出すことを伝えた。
ゲーウシュ・ウルヴァン:安心して、ありとあらゆる動物を養い育てるようになる。
死んだ牛の体から様々なものが出る(55種類の穀物、12種類の薬草)
アフラマズダ:それを月の許に送る。月は光で種子を清めた。
種子から一匹の雄牛と雌牛が生まれた。
雄牛と雌牛から動物(282種類の動物)
アフラマズダ:獣を大地に、鳥を空中に、魚を水中に棲ます。
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ミスラ
河の岸に一本の神聖な無花果の木、その陰に岩があった。岩からミスラ(小刀と松明を手にしている)が生まれた。ミスラは無花果の葉を衣とした。
ミスラ:世界のすべてのものを征服しようと、まず太陽のところへ行った。
両者は力比べをし、互いの力に感服し仲直りをした。両者は互いに助け合うことを約束。
ミスラ:アフラマズダの怪牛のところに行きその背にまたがった。
怪牛:怒り、駆け出した。
ミスラ:飛び降り怪牛を引きずろうとした。怪牛は疲れミスラのいうことをきくようになった。
ミスラ:怪牛を洞穴の中へ押し込んだ。
怪牛:元居た山の上の草原へ帰った。
太陽:助け合う約束の通りミスラへ助け手として一羽の大鴉を送った。
大鴉:ミスラを勇み励ました。
怪牛:ミスラに追い詰められ再び洞穴へ潜ろうとした。
ミスラ:左手に牛の鼻の孔をつかみ、右手の小刀で怪牛を刺した。
牛:倒れ体と血からあらゆる薬草とあらゆる動物が生まれた。
ゲーウシュ・ウルヴァン:展開で動物の保護者となる。
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牛から生まれた珍しい動物
①シームルグ、またはサエーナという鳥(非常に大きな鳥層の翼はやまやまを蔽っている雨雲のようで、ブールカシャ海の霊木ガオケレナに止まっている。時々天を翔ける。その時木が揺れ千の芽が出る。戻ってくるときは千の芽が砕け落ち八方に種子が散る。鳥の羽には魔力がある。)
英雄児ザールは白髪で生まれ父親からは山へ捨てられたが、サエーナ鳥が拾い育てた。ザールが育ち父親のところへ帰るときはサエーナから羽を一枚もらう。羽はたびたび不思議な力をあらわした。
ルスタムは母ルーダーバから生まれるとき難産で脇腹を切ったがザールがサエーナの羽で傷口をなでると傷が癒えた。
ルスタムがアスファンディヤール(イスファンディヤール)から痛手を負った時サエーナの羽で死を免れた。
②チャムローシュ(巨鳥。サエーナと一緒にガオケレナに止まっている。八方へ散った種子を拾い集めチシュトリアの許へ持っていき水で種子を浄めてもらう。その後種を空からばらまく。)
ツラニア語族の人々がイラン地方を攻め荒らしたときは、精霊べレジアの命を受けイラン人を守った。
③ヴァーレガン(魔法鳥。あらゆる動物の中で一番早く飛べる。)
ゾロアスターが災いから逃れるためヴァーレガンの羽で体を撫でた。
④アショー・ズシュタ(災いを払う力がある。)
ゾロアスター教の信者たちは爪を切るときこの鳥に捧げる。
⑤牛魚(海の中に棲んでいる。時々変な声で鳴く。その鳴き声を聞くとあらゆる魚が孕む。)
⑥ハザヨーシュ(牛。昔、この牛に人が乗ってブールカシャ海を渡った。)
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国々の創造
①アイリアナ・ヴァエーゴー(ヴァングヒ・ダーイチャ河の岸に沿っている。ペルシャ人の本土。最初の動物の雄雌がここで生まれた。アングラマイニュが河に毒蛇を生み、寒い冬も作った。冬は11か月、夏は2か月。この2か月も寒い。とても寒い国)
②(美しい一面の荒野に草木の茂る国。今日のサマルカンドのあたり。アングラマイニュは夥しいイナゴを作った。イナゴは草木のみならず動物もかみ殺す。)
③マルブ(美しい地。アングラマイニュが「罪悪」と「掠奪」を作り出したのでいろんな敵に攻め込まれさんざんに荒らしまわされる。)
④バークジ(美しい国。アングラマイニュはこの地を覆そうと蟻と蟻の塔を造った。)
⑤ニサーヤ(美しい国。アングラマイニュは腐敗させるため「不信」を作った。)
⑥ハロユー(この地の人は家族の一人が死ぬとその家から離れて短くて9日、長くてひと月帰らない風習がある。アングラマイニュは「号泣」と「涙」を造った。)
⑦ヴァエーケレタ(美しい国。アングラマイニュは偶像崇拝のパイリカ・クナータイチを作った。)
⑧ウルヴァ(美しい国。ユーフラテス河の下流にあたって地味豊かな牧場に富んでいる。アングラマイニュは「高慢の罪」を造った。)
⑨ケネンタ(アングラマイニュは贖うことのできない罪を造った。)
⑩ハラヴァイチ(アングラマイニュは贖うことのできない罪を造った。)
⑪ハエーツマント(殊に美しい国。光明に満ちている。アングラマイニュは妖術を使う罪を作り出した。この国の人は盛んに妖術を使って人を殺したり害したりする。)
⑫ラガ(美しい国。お坊さんと武士と農夫との三階級からなっている。アングラマイニュは疑惑の罪を作り出した。この地の人はお互いに疑いあって、いつも争いが絶えない。)
⑬聖カクラ(美しくて土地がよく肥えている。アングラマイニュは死体を料理して食う罪を作り出した。どんなことをしても贖うことができない重い罪。)
⑭ウァレナ(美しい国。アングラマイニュは女に月経を与え、絶えず他の国から抑えつけられるようにした。)
⑮バンジャブ地方(五河地方)(アングラマイニュは酷い暑気を造り、女たちに月経を与えた。)
⑯チグリス河の水源地方(アングラマイニュは寒い冬を作り出した。)
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病気退治
アフラマズダ:天国を造り終わる
アングラマイニュ:九万九千九百九十九の病気を造った。
アフラマズダ:マートラ・スペンタに病気の退治を頼んだがそのような力はなかった。
アフラマズダ:変わりに日頃使者として手許に置いているナイヨーサンガへアイルヤマンの館へ病気の退治を頼むように言いつける。
ナイヨーサンガ:馬でアイルヤマンに始終話した。
アイルヤマン:九種の馬、九種の駱駝、九種の牛、九種の家畜、九種の木の枝をもってアフラマズダのところへ行き、九種の畦を作り、悪魔を追い払う祈願をした。すると病気はすべて退治された。
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人間創造
アフラマズダ:天、地、太陽、月、星ができた後、自分の体から出る汗で人間を作る。名前を「ガヤ・マレンタン」(人生という意味)と名付けた。(ガヤ・マレンタンは15歳の若者の姿で、背が高くて色が白くて、体中が光り輝いていた。)
アングラマイニュ:ジャヒに人間の体に毒をかけるようにそそのかされ、ガヤ・マレンタンの体に毒を注ぎかけた。さらに窮乏、苦悩、飢え、疾病などの重荷を背負わせた。
ガヤマレンタン:重荷に苦しんで死んでしまった。しばらくすると体が黄銅となり、手足から金銀鉄錫鉛水銀ダイヤモンドが生り出た。
黄金はガヤマレンタンの大切な種であるため大地の保護霊スペンタ・アームマイチが土の中に納めた。
四十年たって、その種から一対の男女が生まれた。男の名はマーシア、女の名前はマーシオーイー。人間はだんだんと増えていった。
②神が人間を造り悪魔と戦わせるためこれに五つの武器を授けた。
1つ目:暖かい微風
2つ目:強い風
3つ目:光
4つ目:水
5つ目:火
人間:暖かい風を纏い、上に光をつけて、その上に水を蔽い、さらにその上を強い風で包み、火を投槍として悪魔に立ち向かった。
悪魔:煙と炎と燃え盛る火と闇と雲を援軍とし、人間と戦った。
20年たつと悪魔が人間を倒し光明を奪って、暗黒の中に人間を包んだ。
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最初の男女の仕業
最初の男女マーシアとマーシオーイは最初人間の姿ではなく樹の形をして、男女互いにくっついていた。
しばらくたつと互いに分かれて、二人の人間となった。
アフラマズダ:ふたりに人類の先祖であること、神の掟に従うこと、悪魔をあがめてはならないことを教え諭した。
マーシアとマーシオーイ:世界の様々なものを見驚嘆してアフラマズダの正義について(水、大地、植物、動物、星、月、太陽など)話し合った。これが人類が初めて交わした言葉であった。
「偽り」の精霊:二人の胸に巣くい二人の目をくらませた。
マーシアとマーシオーイ:すべての創造物を造ったのはアングラマイニュと言い出した。それはアングラマイニュの耳にも入った。
マーシアとマーシオーイ:生まれて20日間草の葉を体に纏って、食べ物も口にせず歩き回っていた。30日過ぎて広野に来た。そこで白い毛の牝山羊の乳を飲んだ。
マーシヤ:山羊の乳を飲むまではこんな楽しさはわからなかった。といった。
アフラマズダ:人間が山羊だけをたたえることを怪しんで二人から食物の味を奪った。
マーシアとマーシオーイ:さらに30日経ち一匹の肥えて白い顎をした羊を殺し木をこすって火を起こし火で肉をあぶった。食べる前に3切れの肉を火に投げて「火」へもう1切れの肉を空へ投げ「ヤザタ」へ分け前としてささげた。
マーシアとマーシオーイ:はじめ草の葉を体に纏っていたが次には動物の皮を身に着けるようになった。さらに毛を織って着物、鉄から道具、木から住家を造った。
マーシアとマーシオーイ:アフラマズダの創造物を勝手に利用し感謝しなかったためアングラマイニュに誘惑され心が荒み、喧嘩を初めて髪の毛を引っ張ったり殴りあったりしていた。
アングラマイニュ:二人をそそのかし自分を尊ぶように聞かせた。
マーシアとマーシオーイ:牛の乳を搾り悪魔の住んでいる大空の北方に投げた。悪魔に供え物をしたため永い間限りない肉欲にふけ、二人の子供が生まれたが一人ずつ二人が食べた。それから男女七人を生んだ。
アフラマズダ:マーシアとマーシオーイを子供から遮って子供を食べさせなかったのでその子孫は繁殖した。
マーシアとマーシオーイ:百歳になって死んだ。
トップへ
霊酒ハオマ
人間は病を治すすべを知らなかった。
スリタ:賢く富んでいた。草の根や木の皮を薬にして熱病や疫病をいやす術を見出した。しかし刃物から受けた傷を治せなかったたため外傷を癒す術を考えていた。
クシャトラ・ヴィルヤ:外傷を治す術として、切っ先と背が黄金の小刀を作りスリタに使い方を教えた。
スリタ:満足できず、不思議な霊薬を見つけようとしていた。そしてアフラマズダに願った。
アフラマズダ:願いを聞き入れ、ガオケレナの周りのハオマという草をスリタに与えた。
スリタ:ハオマから霊酒ハオマを醸した。これを病人に飲ませると酷い病人もすぐに元の丈夫な体に戻ることができた。
スリタは「病を病に、死を死に追い返す」えらい人物とされ、最初の医者となった。
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天国と地獄
ヴィーラーフという男が死んで霊魂が体から抜け出し黄泉をさして歩きだした。幾日か立つとチンヴァットの橋というアフラマズダが造った橋の前にたどり着いた。
橋のところに麗しい乙女がいた。乙女はヴィーラーフの行為で、現世で良い行いをしたため自分が美しいという。
ヴィーラーフの霊魂はスラオシャとアータルに導かれ天国へ入った。
スラオシャとアータル:ヴィーラーフに天国と地獄を見せると約束した。
ヴィーラーフ:ハミースタカーンと呼ばれるところを通る。
ヴィーラーフ:その後「善思」「善言」「善行」の三つの階段を上った。そこは正しい人間ではあるがアフラマズダの教える徳行をしたのではない人の霊魂が住んでいる。階段を上りつくすとガロートマーンというところに出る。
ヴィーラーフ:ガロートマーンを通り越すと、河のほとりに出た。たくさんの霊魂が河を渡ろうとしている。あるものは簡単に渡るが他のものはどうしても渡り切れない。二人の案内役に訊ねた。
アータル:親戚や友達をなくした人々が掟にかなわぬ嘆き、涙を流し、その涙でできた河と説明。河を越えられないのはその親戚があまり法外な嘆き方をしたからと説明。
3人:チンヴァットの橋まで引き返し地獄へたった今現世から来た邪悪な人間の霊魂の後をつけた。
邪悪な人間の霊魂は裸で腐れ爛れて鰐足をした女の姿をしていた。歩く霊魂に悪臭の冷風が吹き付けた。風に吹かれ「邪思」「邪言」「邪行」の階段を上り地獄の顎に来た。そこは悪人の霊魂が閉じ込められている。
チンヴァットの橋の下には、最もひどい悪行をした人々の霊魂を押し込めておく深淵がある。深淵は底がなく火を燃やしても煙も立たないと信じられていた。深淵の底にはアングラマイニュが邪悪な霊魂達に向かってアフラマズダに助けられながら悪の仕事をしたことをあざ笑う。
善人の霊魂が住んでいる天国ではアフラマズダの黄金の椅子のところに集まり、音楽を聞きナイヨーサンガを自分たちのそばに置き自由に用足しをさせることができる。
チンヴァットの橋は善人の霊魂がやってくると、橋は投槍を九本つないだ程の広さになり天国に行ける。悪人の霊魂の場合一筋の糸の幅に縮まって、地獄に落とす。
ハミースタカーン:善い行いと悪い行いが丁度等しい人々の霊魂が住んでいる。
ガロートマーン:ゾロアスター教の訓戒を良く守った人々の霊魂が住んでいた。そこではみんな光り輝く姿で楽しくうれしくあちらこちらを歩き回っていた。
【「善思」「善言」「善行」はゾロアスター教で定められている。真実を語るという命題がある】
地獄の霊魂は生前になした悪い行為によって責苦を受ける。(夫に不忠実な女や靴を履かないで大地を汚したものの霊魂は、夥しい蠍に体を刺される。夫を嘲り辱めた女は舌に蠅を通して吊り下げられる。邪悪な王者は五十の悪魔あら鞭で叩きのめされる。無法に家畜を殺したものはその手足をもぎ取る。ケチは拷問台の上で、千の悪魔に踏みにじられる。嘘つきはいろんな虫に舌を噛まれる。雇人に賃金を払わなかったものは、人肉を食わねばならない。自分の子を殺した女は頭に石臼を乗せて、双の乳房で丘に穴を開けねばならない。自分の田畑を広くするために境の石を動かした男は、指と爪とで丘を切り開かねばならない。約束を破った者は刺叉や弓の屋で絶えず体を突かれる。
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ゾロアスターとその迫害
プールシャスパという男がいた。霊草ハオマを口にした。ハオマに偉大な人間の霊魂が含まれていた。ヅグゾーヴァという乙女と結婚しゾロアスターが生まれた。悪魔はゾロアスターを殺そうとしていた。
アフラマズダ:ゾロアスターに宗教の神髄を教えた。彼は熱心に教えを説いた。
アングラマイニュ:ブーイチにゾロアスターを殺すように命令。
ブーイチ:ゾロアスターに神をたたえる祈りを唱え続けられ力を失って帰ってきた。
アングラマイニュ:アフラマズダに授かった大きな石を揺り動かしていたところにやってきた。
ゾロアスター:アングラマイニュの造ったすべての邪悪なものを破壊し、サオシャントが東の朝日の出る国の湖から生まれるまで石を揺りうごかすと宣言。サオシャントが生まれたらアングラマイニュを倒し死者を復活させると予言した。
アングラマイニュ:ゾロアスターを恐れ言葉巧みに誘惑したが断られた。また、誰の命令で行うのか訊ねた。
ゾロアスター:アフラマズダの命により行動していることを伝えた。そのための武器がある。
①ハオマの液汁
②神聖な臼
③神聖は盃
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最初のペルシャ王
ペルシャの最初の王はガヨーマルト。大昔の王であるので生活は簡素、山の中に住み獣の皮を纏っていた。30年世界を治めた。徳が高かったため野山に住む獣も玉座に集まって忠実な家来となった。
ガヨーマルトにシヤーマクという男の子がいた。凛々しい若者。戦いの技に優れている。王は心から息子を愛していた。
王に人間の敵はなかったが、アーリマンという悪魔が妬みの目で王を見ていた。シヤーマクは兵を集め攻め入った。しかしアーリマンの手にかかり命を落とした。
ガヨーマルトは悲しんだ。その後不思議な声が再戦を進め次は勝利と予言した。ガヨーマルトは不思議な声をアフラマズダの声と信じた。
シヤーマクはホーシャングという子を残していた。ガヨーマルトはホーシャングを限りなく愛し他人の目に触れさせたくないくらいであった。
ガヨーマルトはホーシャングを大将としてアーリマンとの戦いに出させた。すると、獣も家畜も応戦した。尊い神の加護があり戦いに勝利した。ガヨーマルトの死後、人気を得てペルシャ王となる。
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12.火の起源
ホーシャング王は従者とともに山坂を登っていたら怪人が現れた。爛々たる双の目、大きな口から濛々と煙が出て渦巻かえって空を暗くしていた。
ホーシャング:怪人に石を投げたが怪人が身をかわした。結果傍らの岩に激しくあたった。そこから火花がで野原に燃え移った。怪人はその火の中に姿を消してしまった。人類は初めて火を見出した。火を授かったことをアフラマズダに感謝した。
ホーシャング:従者たちに火を仰ぎ敬うことを教えた。これをもとに拝火教を始めた。火を見つけ出した記念に夕方から饗宴を開きその宴をサダーという。
ホーシャング:岩から鉄をとることを考えたり、溝を掘って、乾ききった地に水を注ぐ術を始めた、牛や驢馬や羊を飼うことや犬に家畜の番をさせること、貂や狐の皮を衣とすることパンを作って食うことなどを人々に教えた。
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王者を呑む怪馬
ホーシャングに次いでタームーラス。家来の大臣に知恵の優れたものがあり魔法と媚薬を使って一人の悪魔をだまして生け捕りにして王の館につれてきた。
悪魔は怒り戦いを挑んだ。タームーラスは応じて悪魔の首領ギウーの頭を激しく殴り殺した。悪魔はみんな生け捕りにされた。王は悪魔を殺すよう家来たちにいった。
悪魔:命乞いをした。悪魔は代わりに不思議な術を教えるといった。
タームーラス:悪魔を許した。
悪魔:書物と筆と墨とをもってきて読書の法を教えた。
タームーラス:熱心に学問にはげむようになった。王は30年世界を治めた。時々アングラマイニュを征服して馬にして乗り回した。
アングラマイニュ:仕返しに王の妃に「時々黒い馬にお乗りでございますが、一度も怖いとお考えになったことはないのでございましょうか」と訊ねた。妃は知らないと答えたがそれを王様に聞くよう頼みお礼になんでも与えるといった。
妃:欲に目がくらみ王に訊ねた。
タームーラス王:ハラ・ベレザイチ山の上で頭を下げるときだけは、恐ろしくてたまらないと答えた。
アングラマイニュ:次の日ハラ・ベレザイチ山で頭を下げてタームーラス王を食べてしまった。
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恐ろしい冬
イマという王様がいた。賢明で偉大。ペルシアの国中が安らかに富み栄えた。悪魔や鬼などをうち平らげ、彼らの宝物を人間に恵んだ。
大詩人フィルダウシー:王をたたえて歌った。
アフラマズダ:一本の黄金の矢と黄金を込めた一本の鞭をイマに与えた。
「王は、国中の人と獣とを不滅ならしめ、植物と水とを枯れることなからしめ、また食物を尽きることなからしめぬ、雄々しきイマの御代には、寒さも暑さもなく、老齢も死もなく、悪魔の始めし嫉みもなかりき」
鞭「ファイヤービュートもしくは電撃鞭の可能性有」
イマ:矢と鞭によって、国を良くした。牛や馬や犬や鳥、人間の数も次第に増えた。
アフラマズダ:ますます王の感心し、三つの聖なる火を与え国を守らせた。
三つの火
フローバク:クヴァーリズム山にとどまっている
グーシャスプ:アスナヴァンド山にとどまっている
ブールジン・ミトロー:レーヴァンド山にとどまっている
三百年たって人間も家畜もますます増え住むところがなくなって困った。
アフラマズダ:大地を広くするようにイマに言ったところ、大地を広くする力がないと返答。イマに矢と鞭を使うように示した。
イマ:矢で大地をこすり、鞭で大地を撫で、体を伸ばすように祈った。大地は三分の一だけ大きくなった。
人間も動物も年月が経つにつれ増えるばかりで大地はイマに頼まれ三百年ごとに三分の一ずつ大きくなって九百年目に初めの大きさの倍になった。
アフラマズダ:ダーイチャにあるアイル・ヴァエージャーに、天上界のものを集めた。イマ王も人間のうちで一番優れたものをその地に集めた。
(ダーイチャ:神話的な国土で一時は「トランス・コーカシアのアラスの渓谷」と考えられたこともある。)
アフラマズダ:イマに冬が来ることを伝えた。大地は深い雪に埋まり家畜の三分の一だけ死なずに済む。避難所を作るように教える。
大きな囲繞地を造り牛、馬、羊、犬、鳥、赤く燃える火の種をそこに蓄えておき、他にもう一つ大きな囲繞地を造り、そこに広大な館や砦や地下室を造る。大地において一番優れた男女の人間、一番見事な畜類、一番背の高く香のいい樹、一番味のいい木を蓄える。せむしやはとむね、狂人や不具者やらい病やみ、また心の汚れたもの、嘘つき、邪悪なもの、アングラマイニュの極印を打ったものは囲繞地に入れてはならない。囲繞地の一番広いところには九つの街路を儲け、黄金の矢で囲繞地のところどころに印をつけ、内側にイマ自身の光で輝く入口を設ける。
イマ:自分にどうしてそのような囲繞地を造ることができるのかと嘆く。
アフラマズダ:今の踵で土を崩し、陶土をこねて壺を作るようにして作ると教えた。
イマ:教わった通りに囲繞地を造り人間たちを連れ込んだ。
そこに住むものは一年に一度だけ太陽や月や星の現れたり沈んだりするのを見るだけで、その一年は一日のように感じられた。
囲繞地の中では動物も人間も4年に一度子供を産んだ。みんな幸福であった。
霊鳥カルプシプタル:囲繞地に飛んできてアフラマズダの教えを伝えている。
・ガヨーマルト、ホーシャング、タームーラスのあとジャムシード(イマ)が現れた。第一期がイマの治世、第二期が怪物アジ・ダハーカの支配、第三期がゾロアスターの時代(紀元前660)
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イマの罪
イマ王が罪を犯した言い伝えがある。
①アフラマズダが不滅の生命を人間に与えないために、ある種の食物を口にすることを禁じた。
イマ王:人間が死ぬのが嫌になり、神に禁ぜられた食物を人々に食べるように進めた。人々は驚き拒否したが、イマ王は食べると神と同様に永遠の命をえると言った。人々は恐る恐る食べた。
アフラマズダ:ひどく怒りイマ王を罰して人間から不滅の生命を取り上げた。
②フィルダウシーの詩篇にあるのはイマの犯した罪は「高慢の罪」であった。
イマ:高御座に座り込んで、自分の国の広大さ、富、人が自分を崇め尊んでいることを考えていた。急に気意が高くなり、自分程偉いものが世界にいないと独り言をいった。
イマ:次に数々の首領を呼び並ばせ、高御座の上から誇らしげに世界は自分のもので富み栄えているのは自分の力、今までの王者で自分が一番。世界は自分が造り、飾り、人間の快楽も眠りも衣も、命も心も全部自分が造り授けたから世界の創造者と呼ぶように言い放った。
こうしてイマはアフラマズダに「高慢の罪」を犯した。
③自分の妹を悪魔の嫁にする
イマ:晩年、愚かな気紛れから妹のイマクに悪魔の嫁となるよう勧めた。
イマク:それを拒否した。
イマ:悪魔と結婚すれば栄えるし、自分も悪魔の女と結婚すると言った。
イマク:イマも悪魔と結婚するならばと賛同した。
イマ王もイマクも悪魔と結婚し、アフラマズダの怒りに触れて、数々の災いが王に降り注いだ。
どこからともなく「アジ・ダハーカ」という怪蛇がきて、イマに迫った。イマは恐れて宮殿や財宝、高御座を捨てて百年間誰も気づかぬところに隠れていた。
その後、アジ・ダハーカも自分のことを忘れただろうとシナ海の浜辺に姿を現した。
アジ・ダハーカ:イマ王を忘れてはおらず、王がシナ海の浜辺を歩き出したところ王の体をずたずたに引き裂いた。
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奇怪な接吻
アラビアのザーハークという皇子がいた。アラビア馬を一万頭持っていたので、「万馬」と呼ばれていた。
イブリースという妖精が正直な男に化けてザーハークの館を訪れて彼を誘惑しようと、ザーハークに面白い話をいろいろ聞かせた。
ザーハーク:話を面白がり、もっと聞かせてほしいといった。
イブリース:一つの誓いとして自分が話した秘密をほかに漏らさないことを約束すれば続きを教えるといった。
ザーハーク:面白い話を聞きたいあまり、何も考えず誓いを立てた。
イブリース:ザーハークの父が老齢で役に立たないため父上を殺して王者となれといった。また、動揺しているザーハークに、すでに誓いをたてたため他の者に話したら命がなくなるしそれだけでなく自分の申したことを聞き入れなければ災いが降りかかるといった。
ザーハーク:心苦しさに悶えながら、どのように父を亡き者にするのか訊ねた。
イブリース:祈禱の場所に行く路に深い落とし穴をこしらえる。と教えた。
ザーハーク:それに従い、祈禱へ行く路に深い井戸を掘らせて、その上に草をかぶせた。ザーハークの父は井戸の中に落ち込んで、手と足を挫いて死んだ。
ザーハーク:王者の位についた。
イブリース:ますます忠義めかして、日ごとに珍しい美味を造り王の食卓に並べた。
ザーハーク:非常に喜び、イブリースになんでも欲しいものを褒美として与えるといった。
イブリース:褒美としてザーハークの裸の肩に接吻させてほしいと頼んだ。
ザーハーク:快く願いを受け入れイブリースが接吻すると、そのまま姿を消して唇の触れたところから二匹の真っ黒い蛇が跳び出した。
黒い蛇:日ごと王の体に纏わりつき嘗めたり咬んだりした。
ザーハーク:非常に苦しみ大勢の学者や魔術師に蛇を払い去らせようとしたができなかった。
イブリースの変装した医者:王の館に訪ねてきて、日ごとに人間の脳髄を食べさせれば、苦しめることをやめると教えた。
ザーハーク:それ以来幾人かの男女を殺して、その頭を切り裂いて、脳みそを蛇に食わせた。
イブリース:王が騙されていることをみて世界に人間の種が尽きるだろうと喜んだ。
ザーハークが二匹の蛇を持っている噂が四方に広がり、ペルシャの貴族は恐れ自分たちの王者のジャムシードを捨てて、アラビアに逃げていった。
ザーハーク:夥しい兵を引き連れてペルシアに攻め入ってジャムシードを追い払った。
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薄命の王者
ジャムシードは寒さと飢えで疲れさまよっているうちにザーブリンスターンについた。そこの王ギューレンには一人の美しい乙女があった。(15歳、賢くて雄々しく男物の戦衣を身に纏って、戦場をかけていた。)
この王女は多くの王子が乙女の勇気と美貌に憧れ結婚を申し込んでいたが、彼女は相手にしなかった。カーブル生まれの魔術に長けた乳母が世話していた。
乳母:王女にうれしい話があると言って、天体の動きで運勢を占った結果、イラン地方の王様と王女が結婚すると出た。と伝えた。
王女:これを聞いてうれしそうにしていた。
ジャムシード:バラの咲く春、ザーブル町に入った。知らずに王の館の園を歩き、門のそばの木蔭で体を休めていた。
奴隷の娘:園から出てきて、ジャムシードに気づいた。
ジャムシード:自分の身の上を伝え、二三杯の酒が欲しいと伝えた。
奴隷の娘:王女に伝えた。
王女:酒と音楽と美しい乙女を与えると言い。侍女を連れて門へ行きジャムシードを園の中へ連れ込んだ。噴水の池のそばにきて敷物の上でジャムシードを座らせた。
ジャムシード:侍女に足を洗われて、酒を飲み音楽が流れると疲れがとれ、雄弁に語り出した。
王女:客人の雄々しく気高い容貌から、ジャムシードと見抜く。
その時二羽の斑鳩が塀に降りてたわむれ始めた。
王女:侍女に弓矢を持ってこさせて、「どちらを射落としましょうか。指図してください」といった。
ジャムシード「私に弓をお渡しなさい。どんなに強くても女は男の半分です。」といった。「もし私が雌の鳩に射当てたら、この館で私が心から敬愛する乙女が、私のものになりましょうね」といった。
王女:にこりと笑ってうなずいた。
矢は見事雌鳩の双の翼に命中した。
(弓:虹の可能性有)
ジャムシードが安々と引き絞った弓は非常な強弓で、これを引くことのできる武士は、ザブールには一人もいなかった。
王女:「この方は、もう間違いなくジャムシード様だ」と思った。「雄鳩が帰ってきました。もし私があれに射当てましたら、この団欒の中にいる男の方は、私の夫となりますでしょうね」といった。
ジャムシード:すぐに乙女の意中を悟った。
乳母:矢を放たないうちにやってきた。
王女:今までの出来事を乳母に話した。
乳母:何物をも見抜くまなざしで客人を頭から足先までじっと眺めて王女に予言が本当になったこと、客人が確かにジャムシードであることをつげ、生まれてくる子は世界を征服する子供となることを告げた。
王女:館にあるジャムシードの絵姿を持ってこさせ、絵姿と客人が少しも違わないのを見てうれしさに吐息をついた。
ジャムシード:絵姿を眺めたが昔と変わった自分の姿に涙を流した。
王女:「なぜお泣きになりますの。あなたはジャムシード様でしょう。どうか本当のことを言ってください。」といった。
ジャムシード:「いいや、そうではありません。」
王女:「でも、あなたは、この絵にそっくりなお姿をしていらっしゃいますよ」
ジャムシード:「広い世の中には、似よった者も確かにある筈ですからね」
王女:乳母や侍女たちを遠ざけジャムシードと二人きりになり「私は永い間あなたをお慕い申していました。私は、命をお捧げします。どうかわしはジャムシードじゃと言ってください。」
ジャムシード:「私が素性を隠しているのには、二つの理由があるのです。一つは私に強敵があり、一つには秘密というものは決して女に明かしてはならぬと思うからです。」
王女:恨めしそうに「女はみんな二枚舌を持っているとは限りません。それに命までも捧げている方を裏切るような女がありましょうか。」
ジャムシード:つつみきれないで、自分の素性と不運とを打ち明けてしまった。
やがて二人は結婚して夢のような楽しい月日を送ることになった。
ギューレン王:娘の夫が尋ね者のジャムシードであることを知ると、ジャムシードをザーハークに送り届け、夥しい恩賞をもらうといった。
王女:それは悪魔の考えで、もし二人の間を裂くならば、まず自分の首を切り落としてくれといった。
ジャムシード:王の心を信じれず、家来たちが素性を知ればどのみちザーハークに知らせると思い館を抜け出し、インドまで流れ着き、塔の蔭に横たえ眠った。
そこへザーハークの使者がきて、ジャムシードをとらえて、王の許に送った。
ジャムシード:鎖で縛られて、ザーハーク王の面前に引き据えられた。
ザーハーク:「ジャムシード、お前の王冠や玉座はどこにある。お前がこしらえた掟はどうしたのじゃ」
ジャムシード:「それはみんなお前が横取りにしたのだ」
ザーハーク:首を刎ねられるか、刺殺されるか、杭刺しか、矢の根で心臓を貫くか選ぶようにいった。
ジャムシード:ザーハークの好きにするように言った。
ザーハーク王:腹を立てて二枚の板にジャムシードの体を挟んで、大きな鋸で真っ二つに挽き割ってしまった。
王女:ジャムシードが死んだ知らせが届くと王女は悲しみに堪えず、毒を仰いで死んだ。
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夢の予言
ザーハークの暴虐と圧制は激しくなった。国中のものは王を恐れ怨み呪っていた。
ザーハーク:三人の戦士が王のそばに現れてそのうち一番若いものが矛で王の頭を殴りつけた。王の首を縄にかけて人々の前に引きずっていった。という夢を見た。賢人たちを呼び夢の意味を訊ねた。
賢人たち:すぐに王の勢力が衰えたことを悟ったが自分の命を取られることを恐れて三日の猶予をもらった。しかし三日たっても一人も返答しなかった。
ザーハーク:不機嫌になり夢の意味を攻めただした。
賢人たち:本当のこと、ザーハークの命が終わりに近づいたこと、これから生まれてくるファリーズーンが王の後を継ぎ、王の頭を殴ったのもファリーズーンであること、王がファリーズーンの父を殺すことを話した。
ザーハーク:恐ろしさに気を失ってしまった。息を吹き返した後も眠ることや食べることができなかった。そして、アブチーンがザーハークのために殺された。
アブチーンの妻:産み落としたばかりのファリーズーンを抱いて家を逃げ出し、豊かに乳を出す牛を持っている牧場の番人の家に一夜泊まった。翌朝、子供を置き去りにして立ち去った。
牧場の番人:気の毒に思い牛の乳で子供を育てた。
それから三年たち、女は子供が忘れられず、また神様から子供を山の中へ連れていくように教えられ、牧場の番人のところから子供を連れて山の仙人のところへいった。
仙人:ザーハーク王を殺して人々を救うのはその子供であること、子供が王者となることを伝え、ファリーズーンにいろんな知識を教え込んだ。
ファリーズーン:十六歳になり、山を下って麓の広野に棲んだ。母から父の非業の死を聞いて復讐を企てようとしたが、母の諭しで神がもたらす機会を待った。
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予言の実現
ザーハーク王は人の脳みそを二匹の蛇に食わせていた。
この頃カーワという力強く勇気の優れている鍛冶屋がいた。二人の子供が蛇の餌食となる火が来た。
カーワ:怒る牛のような勢いで王の許へ行き、自分の子供を蛇に食わせることが正しくないと説いた。
ザーハーク:勢いに飲まれカーワの子供を許した。また、カーワをファリーズーン討伐の軍勢を記した戸籍簿に書き込むように家来に言いつけた。
カーワ:ファリーズーン討伐の軍勢に参加することを拒み、戸籍簿を引き裂いた。館を飛び出すと投槍の先に皮の前掛けを結び旗としてあちこち周り正義のためにザーハークを倒す運動を始めた。
人々は我も我もと旗印に群がった。
カーワ:ファリーズーンと巡り合った。
人々は喜び勇んで皮の前掛けの旗を黄金や宝石で飾り立て「カーワの旗」と呼んだ。(カーワの旗:神聖の印として代々の王者が位に登るときの宝となった。)
ファリーズーンには二人の兄がいて一緒についていった。カーワに頼んで黒鉄で牝牛の頭をした矛を作ってもらった。魔術師が彼に不思議な技を教えたため目は炯炯と輝いていた。
二人の兄はそれを見て妬ましくなり、彼を殺そうとファリーズーンが山の下に眠っているのを見て、山頂から大きな石を転がした。
ファリーズーン:その音に目を覚まし、魔法で石を止めた。
カーワ:軍勢を指揮しザーハークの館に押し寄せ、まず王の造った魔の塔を襲った。
ファリーズーン:魔の塔には様々の怪物が潜んでいて、強い呪符があり入れなかったが、ファリーズーンは呪符をつかんで地面にたたきつけ、怪物どもを牝牛の矛で倒した。塔の中にジャムシードの妹、シャリナーズとアルナワーズが閉じ込められていた。
ファリーズーン:二人をもてなし、ザーハークの行方をアルナワーズに聞いた。王はインドで偉い魔法使いを手に入れ、ファリーズーンを倒そうとしているとわかった。そのまま王の館にとどまって待つことにした。
クンドラブ:ザーハークの留守を預かっていたがファリーズーンから逃げてザーハークの許へ駆けつけ都を奪われたことを話した。
ザーハーク:恐ろしくなり自分の運命が尽きたと知る。そして平気を装ってとぼけた。
クンドラブ:怒って、シャリナーズやアルナワーズを明るみに出したことを告げた。また、王が国を失ったことを伝えた。
ザーハーク:王の兵士たちは王を捨てて立ち去ったため自分ひとりインドから引き返し、夜にファリーズーンの陣営に忍び込みシャリナーズと戯れているファリーズーンを見て物音を立てた。
ファリーズーン:驚いて立ち、王の頭を牝牛の矛で殴りつけた。
どこからか声がして、ザーハーク王を鎖で縛り山の上の洞穴に閉じ込めるよう伝えられた。ファリーズーンはその通りにした。
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三人の王子
ペルシャ王となったファリーズーンはシャリナーズとアルナワーズを妃として三人の子をもうけた。長子はサルム、次子はツール、末子はイーラジ
ファリーズーンは家来のジャンダルに同じ父母から生まれた美しくて賢い三人の乙女を探し、息子三人の妻にしたいと言った。
ジャンダルはヤーマンという国のサルブ王の三人の王女を妻にもらい受けるように手配した。
結婚するとファリーズーンは三人の王子に領土を与えた。サルムはルーム、ツールはツーラン、イーラジはイランをもらった。
イランは美しくルームは汚かったためサルムはツールと話して、父に不服を申し、イーラジの国を奪うと宣言した。ファリーズーンは不公平な処置はないと告げた。
ファリーズーンはイーラジを呼んでこのことを話し、イーラジに平和と友情を求め王座を捨てるといいと伝えた。その後二人の兄にその旨を伝えた。
イーラジは人が良かったため、軍隊は彼に好意を寄せた。それを知ったサルムはイーラジを憎みツールをそそのかした。ツールはイーラジを殺し、ファリーズーンへ送った。
ファリーズーンは悲しみ、イーラジが罪なくこの世を去ったこと、またイーラジの子供に復讐ができるように天に祈った。
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ミヌーチールの復讐
イーラジの妻は娘を産み、その娘はパシャングと結婚しミヌーチールを産んだ。ファリーズーンは戦士としての技をミヌーチールに仕込んだ。ファリーズーンの兵たちもミヌーチールを愛し敬って祖父の仇を進めた。
サルムとツールは使いを出してファリーズーンに自分の悪行がイブリースの仕業として許しを乞うた。ファリーズーンは使いを追い返した。
サルムとツールは復讐を恐れて、先に軍を出すことを決めてイランに進軍した。ファリーズーンも合戦の用意をした。
ミヌーチールは三千の兵で軍勢の中に飛び込み、ツールと一騎打ちをしてその首をとった。サルムは恐れ砦に閉じこもった。
ミヌーチールはすぐにその砦を囲み攻めた。ある日一人の勇士が発矢と槍を投げたがミヌーチールは天高く投げて血反吐を履かせて熱砂の上で死んだ。
ミヌーチールは使いを立てて、サルムに一騎打ちを申し出た。挑まれて応ぜずというのは恥辱なのでサルムは申し受けたがミヌーチールに殺された。敵の大将たちは降参した。
ファリーズーンとミヌーチールは勝ち戦の祝いを催した。それからしばらくしてファリーズーンの死が迫った。老勇士のサームとナリーマーンにミヌーチールの保護を頼みミヌーチールに数々の助言と王冠をいただかせて王位を継いだ。
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白髪の幼児
老戦士サームには生まれながらに雪のように白い頭髪の男の子が生まれた。その子が生まれたとき乳母は白い頭髪の他には欠点のない不思議な子を神が授けたといった。
サームは子供が鷲鳥のように白い頭髪であることを悲しんだ。その子の母親はザールと名付けた。人々は子供を見て何かの前兆だといって子供を捨てたほうがいいと話した。
サームは子供をアルブールズ山に捨てた。それをシームルグという怪鳥が広いわが子と一緒に育てた。
サームが人の世の儚さを考えて沈みこんで眠て夢を見た。夢占師に訪ねると、ザールは生きているということだった。サームはわが子が愛しくなり家来にザールを探させたが見つからなかった。
その夜サームは再び夢を見た。それは見目麗しい一人の若者が多数の軍勢の真っ先に立ってサームに迫ってくる夢だった。今度は自らアルブールズ山に上り、息子が悪魔の子でなく自分の子であれば罪を許して返してほしいと神に祈った。
すると怪鳥シームルグが現れてザールの無事を告げた。シームルグはザールに一本の羽を渡して危険にあったときは羽を火に投げれば守ってやるといいサームへ息子を返した。
ミヌーチールはサームが子供を連れて帰ると聞いて喜び、自分の子ナウダルを迎えに出した。サームはミヌーチールにわが子を見せると、王は黄金の矛と冑を授け占い師にザールの運命を占わせると、あらゆる戦士に優って誉に輝くと出た。
王は喜びを表すためザールにアラビア馬と武具と美しい衣を与え、サームをカーブルとザーブリスターンとインドの総督に任じた。ザーブリスターンでザールは戦士としてあらゆる技を学んだ。
しばらくしてサームはミヌーチールにマーザンダラーンにいる悪魔を征服するように命ぜられた。サームはザールに留守中も技や知識の訓練を怠らないように言い残し、出征した。
ザールはザーブリスターンでの訓練だけでは物足りず、カーブルに出かけて天幕を張って滞在した。カーブルの酋長はミーラーブでザーハークの子孫でザールの天幕を訪ねていろいろと話をしザールを自分の館へ招待した。
ザールはザーハークがペルシャの仇敵であるためその子孫のもてなしは受けてはよくないと思い断った。ミーラーブは失望して館に帰り、妻のシーンズクトに向かって、ザールの容貌の優れていることをほめた。
その場にいた娘のルーダーバは父の言葉に聞き惚れして、ザールに愛幕の念が湧いてきた。それから昼夜ルーダーバはザールのことばかり考え、侍女たちに思いを打ち明けると侍女は父の仇敵を愛してはならないと諫めた。
しかし、乙女心を気遣い、ルーダーバをザールに会わせるためザールの天幕付近にちょうど春だったため連れだって遊びにいった。小川のほとりでバラを積んでいるとザールは従者を連れて天幕からでてきた。
一羽の水鳥が川の面から飛び立ったのをザールは矢を放って翼を射た。鳥はバラを積んでいる女達の傍に落ちた。従者がそれを拾いに行くと、侍女達はザールの腕前をほめた。従者はザールの自慢をした。
侍女たちもザールの自慢に負けじとルーダーバを自慢した。ルーダーバを見ると美しかったので引き返してザールにそのことを話した。ザールは心をときめかせて、指輪は宝玉をルーダーバに送った。
ルーダーバは館に帰ってから、ザールと会えるように侍女に頼んだ。カーブルの都の離れにミーラーブの別荘があったのでそこにルーダーバはこもって、侍女たちがザールを連れてくるのを待った。
ザールは侍女たちに説かれルーダーバに会いに来た。
ルーダーバ:ザール様、ようこそおいでくださいました。私の心と命とは永久にあなた様のものです。
ザール:私の喜びと望みも永久にあなたにかかってます。
ルーダーバは露台から長い頭髪を説いて、ザールの手の届くところに垂らし、露台に上るように促した。ザールは頭髪に接吻しそれを伝って身軽に露台まで上った。二人は熱い思いを語り合ったが親たちが結婚を許すか危うんで気が重くなった。
ザールは天幕に帰ると、賢者たちを呼び集めて、ルーダーバとの結婚の可否を訊ねた。賢者たちはミーラーブがザーハークの子孫と知っていたので反対したがザールは怒ったのでサームに手紙を書いた。
サームは手紙を見ると、占い師に占わせた。結果は世界の征服者となる男の子を産むと出た。サームは結婚を許す手紙をザールに送った。ザールは使いをやってルーダーバにそのことを伝えた。
使いがルーダーバからの返事とザールへの贈り物を携えて館を出るところをシーンズクトに見つけられた。シーンズクトはルーダーバの心を探ろうとすると、ルーダーバはザールに対する愛を打ち明けて、結婚の約束をしたことを語った。
シーンズクトはミーラーブにそのことを話すと怒ったがシーンズクトがなだめ、ルーダーバをミーラーブのところへ連れていった。装飾を外すようにルーダーバに言いつけていたが、逆に派手な恰好でミーラーブの前へ出た。
ミーラーブは厳しく彼女を詰ったが、ずっと黙ったままだったため、部屋から追い出した。ザールとルーダーバは華やかな結婚の儀式を挙げた。ルーダーバは身ごもったが、体の具合が悪くなり、日に日に痩せていった。
ザールはシームルグの羽を思い出して、教わった通りに火にかざした。するとシームルグが出てきてルーダーバの治療法を伝えた。その通りにすると体はよくなり、男の子を産んだ。大きな体で、十人の乳母を必要とした。
両親は男の子をルスタムと名付けた。ルスタムは五歳になると大人程物を食べた。八歳になると岩のような体になり、ペルシャ中のどんな戦士よりも優った力技を現した。
ある夜巨大な白象が檻から飛び出し、人々を踏みつぶしているところに出て行って鉄の矛で増を殴って倒した。ザールはルスタムの力に驚き父祖のナリーマーンの復讐をすることができると考えた。
ナリーマーンはシパンド山の魔法城で大きな石にあたって死んでしまった。ザールはルスタムに敵討ちを頼んだ。仇打ちを頼んだ。ルスタムは塩商人に変装し城の中に入り、安値で塩を売った。その夜城の中に忍び込み城の主を殺して財宝を奪って凱旋した。
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王位を奪うもの
ミヌーチール王は百二十年ペルシアを安らかに治め死んだ。死の間際息子のナウダルに王位を継承、パシャングの子がいつか大群で攻めてくるため、サーム、ザール、ルスタムに助けを求めるよう助言。
ナウダルは初めは父の教えを守っていたが二か月たたないうちに暴虐になり統治国の人々は苦しみ、この国が誰かから取られるようになればいいとささやきあった。その声を聞いてマーザンダラーンからペルシアにサームがきた。
人々はサームにペルシア王となるように勧めた。サームはミヌーチールへの恩があると言い断り、ナウダルに心を込めて諫言した。結果ナウダルはサームの言葉に心打たれ心を改めた。そして賢明な方法で統治するよう務めた。
ツーラン国の王者パシャングはナウダル王が今も暴虐な圧制を続けていると思って、父の仇を打つため息子のアフラーシヤーブをペルシャに攻め入らせようとした。弟のイグリーラスはサームやザールを恐れて戦に同意できなかった。
パシャングはイグリーラスの意見に苛立ち無理やり戦争の準備を進めた。進軍の途中サームが病死したと聞いてアフラーシヤーブは喜んだ。そして部下の大将シャマーサースとカーザルアーンに三万の兵を持たせサームの領土ザーブリスターンを攻めさせた。
アフラーシヤーブ自身は四十万の兵でペルシアに攻めた。ナウダルは十五万の兵で迎え撃った。ツーラン群の武将バールマーンはアフラーシヤーブに敵と一騎打ちの勝負を挑むと伝えたがイグリーラスは止めに入った。アフラーシヤーブは弟の言葉に腹立ち一騎打ちを許した。バールマーンが一騎打ちの名乗りを挙げると、ペルシアの大将カーランが聞いて軍中を見渡した。すると老勇士クバードが名乗り出た。
バールマーンとクバードは長い間戦ってバールマーンが石を投げつけクバードを馬から落とした。カーランは歯噛みをして敵軍に打ってかかり、ペルシアは五万の兵を打たれツーラン軍の勝利となった。
翌日再び戦争をおこなった。ナウダルはアフラーシヤーブと夜まで戦ったが勝負がつかなかった。ナウダルは疲れ悲しくなり敗軍を考え、王子ツースとグスタハムに館へ帰り財宝と一緒にアルブールズ山に隠れるように言った。
両軍二日休み三日目から戦いを再開した。夕暮れまで続きツーラン軍が勝利、ペルシア王は勇士たちと生け捕りになってしまった。こうしてアフラーシヤーブがナウダルに変わってペルシア王となった。
〇ツーラン軍
四十万の兵(ペルシャ討伐部隊)
(アフラーシヤーブ、イグリーラス、バールマーン)
VS
×ペルシャ軍
十五万の兵
(ナウダル、カーラン、老勇士クバード、ツース、グスタハム)
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ザールの奮戦
シャマーサースとカーザルアーンが三万の兵を率いてザールを攻めた。それを聞いたザールはカーブルの酋長ミーラーブと話して迎え撃った。カーザルアーンはザールに首を切り落とされて、シャマーサースは恐れて逃げ出した。
アフラーシヤーブは敗戦の報告を聞いて怒り、ナウダルを殺した。そしてツースとグスタハムを捕まえようとした。二人は逃げてザーブリスターンに行ってザールの保護を受けた。二人は年が若かったため王者にはせず、代わりにライの地を治めている敵軍のイグリーラスに使いを送った。
ザールはイグリーラスにもしザーブリスターンに来ればペルシアの王として迎えると使者に言うように命じた。イグリーラスはこれに承知しザーブリスターンへ向かったが、兄のアフラーシヤーブがイグリーラスを襲った。
アフラーシヤーブは敗戦の報告を聞いて怒り、ナウダルを殺した。そしてツースとグスタハムを捕まえようとした。二人は逃げてザーブリスターンに行ってザールの保護を受けた。二人は年が若かったため王者にはせず、代わりにライの地を治めている敵軍のイグリーラスに使いを送った。
イグリーラスは申し出を承知してザーブリスターンへ向かったが、アフラーシヤーブはイグリーラスを襲った。アフラーシヤーブは弟を詰ったが、イグリーラスは謀反人は兄の方だと言い返した。アフラーシヤーブはこの避難に起こりイグリーラスの首を切り落とした。
このことがザールの耳に入った。ザールは戦いの準備をしたがどうしても適当な王者がいなければ都合が悪くファリーズーン王の血を受けたものを探させた。ファリーズーンの子孫でザウというものがとある島に住んでいることがわかった。
ザールは家来を送りペルシア王となるように頼んだ。ザウは申し出を承知してザールの許に来た。ザールはザウを頂いてペルシアの都に攻め入った。アフラーシヤーブは敗戦し、ペルシアから逃げた。ペルシアの人々はザウを玉座につかせて古くからの慣習に従い王の頭に黄金と宝玉を雨降らせた。
ザウの治世は五年ほど続いたが病で倒れ、王子のガルシャースプが後を継いだが幼かったためザールの裁断を仰ぐことになった。
×ツーラーン軍
三万の兵(ザーブリンスターン討伐部隊)
(シャマーサース、カーザルアーン)
VS
〇ザーブリスターン軍(ペルシア軍)
(ザール、ミーラーブ)
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二羽の白鷹
アフラーシヤーブがペルシアを逃げ出してツーラーンに帰るとパシャングは弟のイグリーラスの命を奪ったことに怒ってアフラーシヤーブを追い出して引きこもった。それから新たにペルシャ王となったガルシャースプが幼く国を治めるに若いという噂を聞いて、アフラーシヤーブを呼び戻しペルシアを攻め落とせば弟を殺した罪を許すといった。
アフラーシヤーブは軍勢を連れてペルシアに攻めた。ガルシャースプは恐れてザーブリスターンのザールに助けを求めた。ザールは年老いていたので息子ルスタムにこの戦争を任せた。ザールはサームの使った巨大な矛をルスタムに渡した。
ルスタムはこの矛を振り回しても倒れない駿馬が必要と思った。ザールはルスタムを厩に連れて行ったが気に入った馬が見当たらなかった。ルスタムは落胆して広野にでて一頭の牝馬が仔馬を連れて草をはんでいるのを見つけた。
仔馬はサフランの園にバラの花が咲き出したような麗しい斑紋がついていた。この馬を乗り物にしようと考えた。仔馬を生け捕りにするため捕縄を振り回し始めた。ルスタムについてきた馬丁曰くこの仔馬は悪魔の血を受けたラクシュという荒馬ということでたくさんの人が生け捕りにしようとしたがみんな親馬のために食い殺されたということだった。
ルスタムは根気よく仔馬を追いかけ捕まえたがそれを見て親馬がルスタムを襲った。ルスタムは拳骨で頭を殴り倒した。ラクシュはルスタムに操られておとなしくなった。ザールは怪馬またがった凛々しい姿を見て涙した。
ルスタムは軍勢を引き連れてアフラーシヤーブを打つため出かけた。ザールは二日おいてそのあとを追った。アフラーシヤーブはその噂を聞いてペルシアを落とすのは造作もないと豪語した。
ザールはアフラーシヤーブと戦う前にペルシア王者として恥ずかしくない人物が必要と考え家来に地方を探させた。するとファリーズーンの子孫でカイ・クバードと呼ばれる知恵と勇気に優り天晴王者の器量のある者がアルブルーズ山に寂しく暮らしているという情報が入った。
ザールはルスタムにカイ・クバードを連れてくるように言いつけた。ルスタムはラクシュに跨り、アルブルーズ山に上った。すると小川のほとりに百花の咲き乱れている木陰に多くの人が酒宴を開いていた。一段高いところに一人の気高い若者が鷹揚と座っていた。
ルスタムが傍に寄ると盃を進められカイ・クバードを探していることを伝えた。さらに盃を勧められ、ルスタムはその団欒に加わった。黄金の王座に座っていた若い男は盃をルスタムに渡し、誰にいわれてカイ・クバードを探しているか訊ねた。
ルスタムは父ザールから命を受けてペルシアの王者になってもらう旨を話したところ、その若者は満面の喜びを浮かべ自分がカイ・クバードと打ち明けた。ルスタムは跪いて挨拶した。
酒宴はにぎやかになってカイ・クバードはいい気持ちになって昨夜二羽の白鷹がペルシアから飛んできて頭に王冠をかぶせた夢を見たことを伝えた。ルスタムは二羽の白鷹は父と自分でそれは正夢になったと答えた。
カイ・クバードとルスタムはザールの許に訪れた。ザールは主だった人々を集め会議を開いた。会議は七日間続き八日目にカイ・クバードを王者にすることが決まった。戴冠式を行い戦いの準備をおこなった。
戦いが始まるとカーランはシャマーサースと戦い打ち取った。ルスタムはアフラーシヤーブの特徴を聞き敵陣に駆け込みアフラーシヤーブと戦った。ルスタムは相手の帯を摑み鞍から大地に投げた。アフラーシヤーブを連れて行こうと引き摺った。
アフラーシヤーブの帯が解けそれを結いなおそうとしていると敵の戦士が群がってきたので王冠と帯とを一緒に持ち帰った。ルスタムは敵の首を切り落とし廻り敵勢はジフーン河の向こうに退いた。
アフラーシヤーブはルスタムに恐れて父パシャングに和平を結ぶようにいった。パシャングも味方の敗軍に力を落としていたためその勧めに従い贓物とともにカイ・クバードにファリーズーンの定めに従い和平を望み、ジフーン河を境に領地を定めようと提案した手紙を送った。
カイ・クバードはアフラーシヤーブに再びペルシアの王位を狙って境を超えない誓いを建てるならば和議を結ぶと答えを出した。こうしてツーラーンとペルシアの間に和睦が成り立った。カイ・クバードはイスタクルに都を定めて仁慈と正義で国を治めた。
ペルシア軍
中陣の将:カーラン
一翼:グスタハム
一翼:カーブル王ミーラーブ
後陣:ザール カイ・クバード(カーワの旗が据えられた)
兵の先頭:ルスタム
ツーラーン軍
アフラーシヤーブ、シャマーサース、アリバースなど
〇カーランVS×シャマーサース
〇ルスタムVS×アフラーシヤーブ
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白魔の災い
カイ・クバードの長子カイ・カーウスがその後を継いでペルシア王となったが父親の力で国中が富み栄えたことに心が驕り昼となく夜となく酒宴を開いた。王は自分がこの世で一番偉い、一番幸福と思っていたがそれをみた一人の悪魔がひどい目に合わせようと音楽師に姿を変えて王の館に訪れてマーザンダラーンを賛美する歌をうたった。
「私の生まれはマーザンダラーン、マーザンダラーンは常春の国、大空は香り、百花は乱れ、枝ごとに鵯棲みて、妙なる歌をさえずり交わす、水の流れは、みなバラの露、情け深き婦女の群は心を蕩かす眼をして行きかう」
カイ・カーウスは歌を聞くとマーザンダラーンに憧れを抱いた。戦士たちにマーザンダラーンを攻め取ろうと提案した。そうすればザーハークにも優ると思ったからである。戦士たちはマーザンダラーンが悪魔の国と知っていたが口に出す勇気がなかったため遠回しにこの企てがよくないことを悟らせようとしたが無駄だった。
そこで戦士たちはザーブリスターンの老勇士ザールへ使いを出して王が音楽師に騙されてマーザンダラーンへ攻めようと考えていることを伝えこれを辞めさせるように願った。ザールは王の前にきて諫めたが聞かなかった。
ザールは自分の領地に帰った。カイ・カーウスはマーザンダラーンに軍隊を出して男女も子供も殺させた。歌のような女を思い浮かべ都に近い広野に陣営を張った。そして近日に最後の攻撃を始めようともくろんでいた。
その夜瀝青のように黒い雲が現れて、大きな雹がペルシャ軍の陣営に落ちた。数千人の兵が雹に打たれて死んだ。やがて夜が開け雹がやんでほっとしている軍の前に悪魔の群が現れて兵を殺したり生け捕りにしたりした。
茫然としている王に白魔の声が聞こえた。王も兵も妖術のため盲目にされてしまった。そしてマーザンダラーンの都に監禁された。カイ・カーウスはザールに手紙を送っていうことを聞かなかった後悔と現状と救出の依頼をした。
ザールはすでに二百歳だったためルスタムに王の救出を頼んだ。マーザンダラーンへは六か月かかる程遠かった。ザールはほかの道を行けば七日でつけることを伝えた。その道には数々の危険や困難があることも一緒に伝えた。
ルスタムは翌日ラクシュに乗って一人遠征へ出かけた。母のルーダーバは別れを惜しんで泣き悲しんだ。ザールも我が子の姿をじっと見送った。
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七つの難業
ルスタムはマーザンダラーンへ急いだ。一日経つと野生の驢馬の群れのいる森についた。その中から一匹の驢馬を殺して焼いて食べた。おなか一杯になるとラクシュの轡を外し草を食べられるようにして野の葦の中で剣を枕に眠った。
しばらくして大きな獅子がラクシュを襲ったがラクシュは獅子を殺した。物音にルスタムが目覚めその様子を見て一人で敵と戦わないように諭した。夜が明けてルスタムは出発した。やがて砂漠に出た。砂は火のように燃えていた。
水が一滴もなくルスタムもラクシュものどが渇いた。ルスタムはひたすら神の助けを祈った。すると一匹の羊が自分のそばを通り過ぎたのを見て水が近くにあると思って、その後をつけた。そこには泉が湧いていた。
ルスタムは水を飲み野生の羚羊を殺して飢えを凌いだ。日が暮れて、ラクシュに敵がきたら一人で戦わず鈴を鳴らして知らせるように言いつけて、眠りについた。真夜中に大蛇が森から現れてラクシュを一飲みにしようとした。
ラクシュはルスタムを起こすため足で大地を蹴った。ルスタムが起きて廻りを見たがすでに大蛇は姿を隠していた。しばらくしてまた大蛇が現れて来たのでラクシュは同様に地を蹴ったしかしまた大蛇は姿を隠し何も見当たらなかった。
ルスタムはラクシュの悪戯と思いラクシュを戒めた。ラクシュはしょんぼりしていたが再び大蛇が現れた。ラクシュは大地を蹴ってルスタムを起こした。ルスタムは闇の中に怪しい光を見つけ大蛇と戦った。その最中にラクシュが大蛇の背中を噛み破った。ルスタムは大蛇の首をはねた。
夜が明けて行く手を急いだ。妖術者の住む国があり日が暮れかかる頃に緑の草の生えた小川のほとりにたどり着いた。しばらく休もうとすると鹿の肉とパンと塩が並んでいた。それを食べようと座り込むとご馳走が夢の世に消えてしまった。
その後に羯鼓と酒瓶が現れた。ルスタムは羯鼓をとり「われは酒宴に喜びを持たず、わが欲するところは戦場に英雄と戦いまた鰐と戦うにあり」と歌った。一人の女の妖術者が歌声を聞いて目も覚めるような麗しい乙女に姿を変じて現れた。
ルスタムは乙女の手に盃を渡して神の名を唱えた。すると乙女は真っ黒い鬼に変わった。それをルスタムは剣で真っ二つにした。妖魔の国を通り過ぎると常闇の国に出た。あたりは真っ暗で月も星も見えなかった。ルスタムはふらふらした足取りで進んだ。
しばらくすると常闇の国を抜けて明るい穀物の穂波に覆われた地に出た。ラクシュを放って自分も楯を枕に剣を傍に寄せて眠りについた。ラクシュは緑の穀物畑に入り込んで勝手に穀物を食べていた。森の番人がそれを見つけルスタムを起こした。
そしてルスタムを罵った。ルスタムは気分を害して男の耳をつかんでねじ切った。森の番人は血まみれになって主人のウーラードのもとに駆けつけた。ウーラードは番人の話を聞くと火のように怒って戦士たちを連れてルスタムのところに押し寄せてきた。
ルスタムは戦士たちを蹴散らしウーラードが逃げようとしたところを捕まえた。ルスタムはウーラードに白魔のいるところに案内させることにした。夜の道を急いでいると、行く手に輝く火が見えて、人の声が聞こえてきた。そこはマーザンダラーンで白魔の武将たちが集まっているところだった。
ルスタムは夜が明けるのを待って、悪魔たちの集まっているところを襲った。悪魔の首領アルジャングはルスタムにつかみかかった。ルスタムは胴体をもぎ取って、悪魔の群れに放り投げた。悪魔たちは逃げ出した。
ルスタムはウーラードに導かれてマーザンダラーンへ入った。ラクシュが嘶くとカイ・カーウスが気付いて喜んだ。ルスタムがウーラードに案内されてカイ・カーウスのもとに来ると王は感謝してルスタムを抱きしめた。
王はルスタムに白魔を倒すように願い七つの山への道とそこに悪魔の群れあり、さらに進むと横穴がありその中に白魔が住んでいること、白魔の心臓から流れる血を眼に垂らすと盲目が治るということを教えた。
ルスタムは七つの山へ行き悪魔が熱くなると眠ることをウーラードから聞いたため太陽が中天に上って悪魔を切り殺した。目覚めた悪魔はみんな逃げて行った。ルスタムは深い横穴に入って暗いなか目を凝らすと毛だらけの巨人が穴の中にたくさん寝そべっていた。
ルスタムが起きろというと白魔は大きな石臼を抱えて起き上がった。ルスタムに名乗れと言い名前を聞くと驚いたが石臼を投げつけた。ルスタムは白魔の腿を刺したが長い組合いになった。ルスタムは「今日の戦いに生き延びたら命が永遠に続く」と思った。
白魔は「素晴らしい敵だ。自分の命ももう望みがないかもしれない」と思った。二人はへとへとになったがルスタムは神の助けで白魔を地面にたたきつけた。白魔は血を吐いて死んだ。ルスタムは白魔の心臓を取り、カイ・カーウスのところに持って帰った。
白魔の心臓の血を目に垂らすと王や家来たちの目は見えるようになった。王は玉座に上り七日間饗宴が催された。カイ・カーウスはその後マーザンダラーンへ使いを送り降伏を進めたが、使いを罵り辱めて追い返した。これにルスタムは怒りマーザンダラーンの王の館に出かけた。
マーザンダラーンで一人の戦士がルスタムを迎えたがルスタムが男の手を握り占めると肉が拉げて馬から転び落ちた。マーザンダラーンの王はこの知らせを聞くと部下随一の猛将カラーフールを派遣した。
カラーフールは手のつかみ合いでルスタムに勝負を挑んだがカラーフールの手の爪は削げ落ちた。カラーフールは王のもとに戻った。それを聞いた王はルスタムに会うことにした。降伏を進められたが応じずに戦いが始まった。
戦いは七日間続いて勝負が見えなかった。カイ・カーウスは砂埃の中神に祈った。八日目にルスタムはマーザンダラーン王と一騎打ちを始めた。王は魔術で自分の体を大きな岩に変じたがルスタムが岩を微塵に砕いて砂埃にまきちらすと脅すと王は元の姿に戻った。ルスタムはマーザンダラーン王をカイ・カーウスの元に引き摺って来た。
マーザンダラーン王は殺された。ルスタムの推薦でウーラードをマーザンダラーンの総督に任じた。カイ・カーウス王は長い間憂目を見た後で、ペルシアに凱旋しルスタム達戦士に光栄ある恩賞を授けた。
1.驢馬の群れのいる森→大きな獅子が現れる
2.砂漠のオアシス→大蛇
3.妖魔の国→消えるご馳走と鬼の化けた乙女
4.常闇の国→月も星もないおぼつかない足取りで進んだ
5.穀物の稲穂に覆われた地→森の番人に悪魔呼ばわりされる。ウーラードの兵士たちに襲われる
6.マーザンダラーン→アルジャングが襲い掛かる
7.七つの山→悪魔の群れがあり進むと横穴があり中に大きな巨人がたくさんいてそこに白魔がいた。白魔は石臼をもっていて戦った。ルスタムは戦いの中ここを生き延びれば永遠の命を得ると思った。(この白魔はルスタムの勇姿から生まれたのではないだろうか)
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昇天の企て
ペルシア王に返り咲きしたカイ・カーウスは領内の巡回を始めた。ハーマーヴァラーンに来るとその地の王の娘、スーダーバに結婚を申し込んだ。カイ・カーウスを快く思っていなかったこの地の王はうわべで承諾し婚姻式を挙げたが式の途中でラッパを鳴らしカイ・カーウスを縛り上げた。王は家来たちと山頂の砦に閉じ込められた。スーダーバはそれを悲しんで夫と別れるくらいなら死んだほうがいいと言い張ったため同じ砦に送られた。
これを聞いたルスタムは主君の不甲斐なさを憤りながらも兵を起こしてハーマーヴァラーンに攻め入った。幾度か悪戦したもののカイ・カーウス王を救い出した。王は度重なる功労のためにルスタムに「世界の勇士」の称号を授けた。
ルスタムのおかげで四方の敵を平らげた王は次第に心が驕ってアルブールズ山の上に二つの華麗な宮殿を作って夜さえ昼を欺く程光り輝くように贅沢に飾り立てた。悪魔イブリースはそれを見て王に罰を下す時が来たと笑い、仲間の一人を下僕に変えて、美しい花束を持たせて王の許に送った。
そして地に接吻して王といえども天上界を知らないとそそのかした。王は天に昇る手段を星占師に訊ねた。すると星占師は鷲の巣から雛鳥を奪って立派に育てた。伽羅の木で大きな箱をこしらえて四隅に山羊の肉を刺した槍を楯、根元に一羽の鷲をしばりつけた。
支度ができると星占師は王と連れ立って箱に乗り込んだ。王は箱の中で酒を飲んではしゃぎすっかり天上界に登れた木になっていた。箱は次第に空中に登っていき王は大地を見下ろしたり近づく天を眺めたりして頗る上機嫌であった。
しばらくすると鷲は飢えのために力が衰えて王や星占師は大空に投げ出された。彼らはアームルに近い森に墜落した。神の恵で体が微塵になることは免れた。ルスタム、ツース、グーダルズは王の一大事とアームルへ駆けつけた。
グーダルズはルスタムたちに王を頻りに避難した。カイ・カーウス王を見つけると手厳しく諫めた。たびたびの失策に王もすっかり気がくじけ涙を流して自分の愚かさを認めた。そして館に帰ると閉じこもって40日間誰にも会わなかった。
その後は心を改めて仁愛と正義と寛大で国を治めみんな喜んだ。
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父子の血戦
ルスタムはムーランの近くで猟をして日が暮れかかった頃野馬をとらえて森で焼いて食べた。その後ラクシュを草原に放って眠りについた。しばらくするとタタール人が現れてラクシュを連れ去った。気づいたルスタムは足跡を追ってサマンガーンについた。
サマンガーンの王はルスタムに敬意を表し徒歩でこれを迎えた。ルスタムは自分の馬が盗まれたことを話すと、王は馬を探させるから客人になってほしいと言った。ルスタムは王にしたがって華やかな饗宴でもてなしを受けた。
ルスタムが気持ちよく眠りにつくと、間もなく燈火を持った少女とともに美しい乙女が枕元に立った。ルスタムが目を覚ますと自分が王の娘で名はターミーナということ、馬を盗ませたのは自分だということ、ルスタムと結婚したいということ、このことを王に願ってほしいということを話した。
ルスタムはその願いを受け入れ、王に結婚のことを話した。王は喜んで二人を結婚させた。楽しい日が続いてルスタムは国に帰らなくてはならないことを告げた。ターミーナに娘が生まれたら護符を髪の中に、息子がうまれたら腕に護符を結ぶようにいった。
ルスタムが自分の国に帰って九か月たって息子が生まれた。サマンガーンの王はスーラーブと名付け育てた。スーラーブが十歳になると自分の父が誰か気になった。ターミーナはルスタムという英雄だと答えその武勇を語った。
ルスタムはたくさんの宝玉をターミーナに贈って生まれた子供のことを尋ねたがターミーナは我が子がルスタムに引き取られるのを恐れて生まれたのは娘と答えたためルスタムは失望してサマンガーンのことを忘れるようになった。
ターミーナはルスタムとの関係を他人に話さないように息子に言ったがスーラーブは父の名を隠さずカイ・カーウス王を玉座から追い出し父を玉座に上がらせ、アフラーシヤーブも怖くないと答えた。
ある日スーラーブは乗馬が欲しいと言った。ターミーナはラクシュの種である仔馬を与えた。スーラーブは喜んでその背に跨ってペルシアを征服すると豪語した。これを聞いたアフラーシヤーブはフーマーンという二人の戦士を呼び出した。
フーマーンにスーラーブにルスタムの正体を隠し親子で戦わせるように仕向けルスタムを殺させスーラーブを殺しペルシアを奪う作戦を伝え、スーラーブのもとに向かった。スーラーブはフーマーン達と一緒にペルシアへ進軍した。
途中でハジールという有名な戦士が籠っている城があり近くに付くとハジールは一人出てきて打ってかかった。スーラーブはハジールを馬から投げ落として家来たちに縛らせた。それをみたハジールの娘グルダーフリードは一人で戦いを挑みに来た。
スーラーブはその姿を見て若い男と思ったがグルダーフリードを馬から引き落としたときに冑が飛んで初めて女とわかった。グルダーフリードは宝物をすべて挙げるので城に返してくれと頼んだ。スーラーブはグルダーフリードを許した。
彼女は城に帰ると会議を開いて夜になると城から抜け出してペルシアのカイ・カーウスの館に行きスーラーブという若者が王を叩き潰すといってペルシアに侵入していることを話した。王はルスタムに使いをやって助けを求めた。
ルスタムは使いの者にスーラーブの容貌を訪ねたがルスタムの祖父のサームにそっくりということだった。ルスタムはその若者が自分の息子に違いないと考えた。しかし妻のターミーナは生まれた子供は女だと言っていた。
ルスタムは急かす使いを無視して悩みを紛らわすため八日間酒宴を開いた。九日目に兵を連れてザーブリスターンをでた。王はルスタムが送れたのを怒って家来が取り押さえようとしたがルスタムはそれを強く払いのけラクシュの背に跨り王に臆病な癖に不人情だと非難し、いつでも王位を奪えることを謳い脅し、自分の国に帰った。
グーダルズはこのままでは王の一大事と思いルスタムの後を追った。そして言葉を尽くしてなだめた。ルスタムは親友グーダルズの言葉に気を取り直して再びカイ・カーウスの館に引き返した。王はルスタムを迎え翌朝には大軍を授け、ルスタムはスーラーブが籠っている国境の城に押し寄せた。
スーラーブと一緒に高櫓から見ていたフーマーンは恐れたがスーラーブは負ける気はないと城の前の天幕へ入ってツーラーンの大将たちと静かに酒を飲んだ。ルスタムは変装して一人で天幕に忍び寄った。
一人の戦士が気づき近寄ってきたが首に一撃を与えて逃げ去った。スーラーブは仇をとると誓いを立てた。夜が明けるとスーラーブはペルシアの武将ハジールを高櫓に連れていき、問いに答えるなら無事に国に返してやると約束し質問した。
カイ・カーウス、ツース、グーダルズとどの天幕に誰がいるのかを聞き出したが、ハジールは本当のことを言ったらスーラーブがルスタムを打ち取ると思いルスタムの天幕にはチンの国王から遣わされた大将といいルスタムはまだ到着していないと嘘をついた。
スーラーブはその天幕をルスタムの天幕と本当は思っていた。そしてカイ・カーウスの天幕に近づいて一騎打ちを申し出た。王は気を飲まれてルスタムに代わりに戦ってもらうように頼んだ。ルスタムは気が乗らないがスーラーブの前に進み出て一騎打ちをしようといった。
スーラーブは「人間にはわしの腕を防ぐ力はない。お前も死んでしまうだろう」といった。
ルスタムは悠然として「高慢なことをいうものではない。お前は、まだ子供ではないか。どこかで、本当の勇士の戦いを見たことがあるか。わしは、千軍万馬の戦士じゃ。獅子も白魔も、わしの手から逃れることはできなかった。わしはお前を殺すに忍びない。お前の若さと美しさとでは、もっと違った運命を求めるのが本当だ」
スーラーブはこの言葉に身に染みて、「あなたは、おそらくルスタムでしょう」と訊ねた。ルスタムはそれを否定した。二人は戦いをはじめた。槍、剣で勝敗がつかず、棒で戦った。ルスタムがスーラーブのような強い戦士を見たことがないと思っていると、スーラーブは弓矢で力を試そうと提案した。
弓矢でも勝負がつかず最後は組打ちを始めた。それも互角だった。ルスタムは明日改めて戦おうというとスーラーブはもう十分戦ったから明日はカイ・カーウスと戦うと言った。二人は陣営に戻り相手の武勇を褒めたたえた
スーラーブはフーマーンにあれはルスタムだと言ったが、フーマーンはルスタムではないといった。夜が明け二人は再び向かい合ったが、スーラーブはひしひしと親愛の情を感じて仲直りを求めルスタムに名前を名乗るよう求めた。ルスタムは断った。
スーラーブは一切の望みを捨ててルスタムに飛びついた。そしてルスタムを抱えて砂原の上に投げつけ胸の上に乗り首を落とそうとした。ルスタムは首は二度投げつけられた後で斬るものだと言った。これを聞いてスーラーブは剣を鞘に納めた。
ルスタムは命拾いして水垢離をとり神に昔の力を与えてくれと祈った。夜が開けるとまた二人は組打ちをした。ルスタムはスーラーブを倒した。ルスタムがスーラーブに剣を突き立てると、スーラーブは自分が父を求めて命を失うことになった、復讐しないではおかないだろうと言った。
そしてルスタムがスーラーブの父の名を聞くとスーラーブは父の名がルスタムであること、母はサマンガーンの王の娘であることを告げた。ルスタムはこれを聞いて倒れた。彼は震えながら立って証拠があるか尋ね自分がルスタムであることを話した。
スーラーブの腕に護符がありルスタムは悲しみに堪えないように「なんという残酷な運命であろう。自分は実の子を殺した。どこに自分自身の子を殺した父があるだろうか。この恐ろしい罪の恐怖から免れることは出来ぬ。自分はむしろ、自分の息の根を止めたほうがいいだろう」といった。
スーラーブはここで死ぬのは自分の宿命と悟り、父が死んでも無意味だから長生きするように言った。ルスタムは遣る瀬無い悲しみに大地に倒れ、スーラーブは傷の痛みにのたうち回った。しばらくしてルスタムの弟やグーダルズなどがやってきてその次第をルスタムから聞いた。
カイ・カーウス王の許に不思議な霊香がありその力でスーラーブの命をとりとめることができるかもしれないと話した。大急ぎで王の許に駆けつけると、訳を話して霊香を求めたが王は冷然としてスーラーブが王を罵ったことを恨んで霊香を与えなかった。
グーダルズが王の答えをルスタムに伝えるとルスタム自ら王の天幕へ駆けつけたがスーラーブが息を引き取った知らせを受け取った。亡骸は棺の上に横たえられた。
カイ・カーウス王はルスタムに「何人も、悲しみから免れ得るものはない。死別は、この世が始まって以来の人間の運命である」と慰めた。
ルスタムは王を睨みつけるようにして「私の子は死んだ。あなたのもくろんでいらっしゃることが、うまく当たったというものです。今後私は、ツーラン人と戦うことを欲しない。フーマーンは、国に帰らしてください。そして、アフラーシヤーブと和睦を結んでもらいましょう」といった。
王は心の中で困ったことになったと思ったが、ルスタムの心を荒立てては、大事になると思ったので「わしは、心からお前の不幸を悲しんでいる。お前に敬意を表して、敵から受けた侮辱と損害とを見逃してやろう」といった。
ルスタムはスーラーブの棺をザーブリスターンに運んだ。ルスタムの家族は喪服をつけて頭に灰を投げかけて、これを迎えた。棺が家の中に運び込まれ、ルスタムの母やその他の女たちの口から、腸を断つような悲しみの声がでた。
スーラーブは丁寧に葬られて、記念碑が建てられた。スーラーブの悲報がターミーナに達すると、狂ったように火の中に身を投げた。家来たちは慌てて彼女を救い出したが、それ以来、うつけた者のようになってしまった。
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多難の小王子
ペルシアの戦士ツースは鶏の声と一緒に起き上がって、ギーブと戦士たちを伴ってダクウィーの広野に狩りに出かけた。森に一人の乙女が現れた。戦士たちは怪しく思いどうして森を一人で歩いている訊ねた。
乙女は悲しげな面貌になり自分の身の上を語った。乙女はファリーズーン王の血統のシーウェルという名前で父親がツーラーンの王パシャングに嫁がせようとしたのを聞き入れなかったためひどい目に遭い家を逃げ出して森をさまよっていたとのことだった。
ツースとギーブはともにシーウェルに心に寄せて妻にしようと言い争ったがカイ・カーウス王に裁決を求めたところ王はシーウェルを自分のものにしてしまった。しばらくすると一人の男児が生まれた。星占師によるとゆくゆく大きな名声を勝ち得るというのであった。
王は非常に喜んで、シヤーウシュという名をつけて小さい時からルスタムに預けられた。シヤーウシュは武士の道、宴席での作法、狩りの技、学問技芸などをルスタムから教え込まれた。立派な若者となって父王の館に帰ってきた。
ハーマーヴァラーン王の娘スーダーバが、その人柄を恋い慕って彼を密室に呼び込んで歓楽に耽ろうとした。スーダーバは父カイ・カーウス王の妃であるため不徳だと思って彼女の言葉を斥けた。スーダーバはそれでも彼を思いきることができなかった。
ある日いきなり彼を抱いて、その顔に燃えるような接吻をした。シヤーウシュは驚いて他の婦女の部屋に逃げ込んで、息をついた。スーダーバはなおも付きまとい根気よく口説いていた。シヤーウシュが頭を垂れ黙っているといきなり羅布を脱ぎ「私はあなたのものになったのだから、あなたも私のものになってください」と言って抱き着き頬に強く唇を押し付けた。
シヤーウシュは弱り切って悪魔のようなスーダーバの味方をして父を裏切ることはできないと考えた。淫蕩な妖女はシヤーウシュが従わないのを見てひどく怨み始めた。ある日彼女は自分の衣をずたずたに裂き破ってけたたましく泣きながらカイ・カーウスの居間に駆け込んだ。
そしてまことしやかにシヤーウシュが自分に乱暴なことをしようとしたと話して王はシヤーウシュを殺してしまおうと考えた。しかし証拠がないと間違いが起こると思い返してシヤーウシュを呼び出した。そして二人の手と衣を嗅いでみるとシヤーウシュは薔薇水の匂いがするのに、スーダーバは酒と麝香の匂いであった。
王はシヤーウシュには罪がないことを認めスーダーバの作り話を秘密にしておくといった。しかし彼女はどこまでもシヤーウシュに罪があると言い張ったので、王はシヤーウシュを熱火の裁きにかけることにした。
シヤーウシュは黄金の兜、白衣で黒い馬にまたがったまま神の助けを祈りながらその中に駆け込んだ。驚きと悲しみがほとばしった。館の高みから様子を眺めていたスーダーバも目が眩む気がして一緒に火の中に飛び込んでしまいたいと思った。
父カイ・カーウスは我が子が紅蓮の炎に包まれているのを見て恐ろしさに玉座からまろび落ちた。シヤーウシュは少しの火傷もなく、悠々として猛火の中から出てきた。無実の罪は確かめられた。王はスーダーバを殺そうとしたが、シヤーウシュは彼女のために懸命に命乞いした。
恐るべき妖女スーダーバはどこまでもシヤーウシュを倒そうと執念深く思い詰めていた。そのうちツーラーンからアフラーシヤーブが弟ガルシワーズとペルシアに攻めてきた。カイ・カーウスは愛児シヤーウシュに手柄をたてさせたく思いルスタムを補佐に迎え撃たせることにした。
アフラーシヤーブは陣屋で不思議な夢を見た。彼は蛇の群がっている森の中にいた。そして夥しい鷲が飛び交って空を暗くしていた。大地は熱気に焦げ爛れて、すさまじい旋風が天幕を倒し、旗を吹き飛ばした。彼の軍勢が散々に打ち破られて、彼は捕虜としてカイ・カーウス王の前に引き出され、王の傍にいた十四歳の少年が、剣を抜いて彼の腰を突き刺した。傷の痛みに覚えず叫び出したと思うと夢が覚めた。
アフラーシヤーブは忌々しい夢について弟に話すと逆夢だと言って笑った。しかしアフラーシヤーブは気になって仕方がないので星占師に相談した。彼らは真実を告げることをためらったがアフラーシヤーブは罰することはしないというので夢は武運のあるペルシア王子がアフラーシヤーブを危険な目に遭わせることを示しているということだった。
アフラーシヤーブはこれを聞いて怖気を感じシヤーウシュに和睦を申し込んだ。シヤーウシュは人質百人の勇士、ペルシアから奪った土地を返すことを条件として聞き入れた。しかしカイ・カーウスは星占師から今度こそツーラン王は滅びると聞いていたので和睦の知らせに腹を立てシヤーウシュは帰るように命じて、新たにツースをペルシア軍の大将に任じた。
シヤーウシュは父の無情を恨んで三百の戦士を連れて敵将アフラーシヤーブの許に身を寄せた。アフラーシヤーブは驚き喜び彼を歓待した。饗宴をはじめ乙女たちが楽の音にシヤーウシュを賛美する歌を歌い出した。一年経つと、アフラーシヤーブの武将のピーラーンがシヤーウシュに自分の娘ジャリーラと結婚させた。
それから暫くしてアフラーシヤーブが自分の娘ファランギースを妻に進めた。ジャリーラにこのことを話すと彼女は夫の幸福と栄達を願い第二の結婚を勧めた。ファランギースと結婚するとアフラーシヤーブは喜んで彼をクータンの王者にして夥しい財宝や像や駱駝や馬を贈った。
シヤーウシュは自分の領地で館を立て、画家にペルシアの王者や勇士たちの像を描かせて、それで数々の部屋を飾り立てた。彼は楽しい月日を送ることができるように思われた。しかしガルシワーズはシヤーウシュを毛嫌いして兄に悪口を語った。
アフラーシヤーブは初めは弟の言葉を笑っていたが、ガルシワーズはシヤーウシュの偽手紙を造りガルシワーズが兄を亡き者にしようと企んでいる旨を巧みに説きつけた。アフラシヤーブはシヤーウシュを討つために戦いの用意を始めた。
これを聞いてシヤーウシュは驚いてペルシアに逃げることにしたがファランギースは身籠っていたので彼女のいうがままにシヤーウシュ一人で出発した。ファランギースには男の子が生まれたらカイ・クスラウと名をつけるようにいった。
三百の戦士を連れて、彼は領地から抜け出した。それを知ってガルシワーズが大勢で追っかけて彼を縛めて元の館に押し込めた。ファランギースは夫の不幸を嘆きアフラーシヤーブが訪ねて来るのを待ってシヤーウシュの無実を語りガルシワーズの讒言を訴えた。アフラーシヤーブは娘の言葉で心をやわらげたが束の間で娘を隔てるとガルシワーズにシヤーウシュの首を刎ね血で地面を汚さないようにするよう言いつけた。血を地にこぼすとそれが自分たちに敵呼ばわりをすると恐れたからである。
ガルシワーズが送った首切人はペルシア王子を大地に引き据え、シヤーウシュが殺害人の上に報復あれと神に祈るや否や首を切り落とした。あらかじめ血を受けるため黄金の桶が用意されていたが数滴の血が大地に飛んだ。そこに一本の樹が生えた。それは「シヤーウシュの樹」と呼ばれて様々な霊験を示したと言われている。
薄命の王子シヤーウシュの血を讃えた桶はアフラーシヤーブの許に運ばれ首は投槍の先で貫いて吹く風に曝された。シヤーウシュの親しい友ピールサムは彼の不幸を嘆き悲しんで、屍を懇ろに葬った。伝わるところによるとこの可憐な王子の殺された時にすさまじい嵐が吹きおこって、全世界は闇に覆われ人々はお互いの顔を見分けることもできなかったそうである。
クータンの住民は心からシヤーウシュの死を悼んでアフラーシヤーブの残忍な行いを呪った。
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魔城の攻めくらべ
シヤーウシュの妻ファランギースは夫の悲惨な運命を耳にすると、気が狂ったように嘆き悲しみ、数々の侍女達も慟哭の声を発した。アフラーシヤーブはガルシワーズにファランギースが子供を産む前に殺すように言った。これを聞いたピーラーンは王の許に駆けつけて、娘を殺す愚行が知れ渡ったら恥辱が王の名に付きまとうため、ファランギースを自分の館に引き取って父のように面倒を見ると言った。アフラーシヤーブは抗い兼ねて、子供が生まれたら自分の許に連れてくるように言った。
ピーラーンはファランギースをクータンに連れ帰り、やがて男の子が生まれた。シヤーウシュの言葉に従いカイ・クスラウと名をつけた。ピーラーンはアフラーシヤーブに子供を渡す気にならずにカルール山に住んでいる百姓に預けた。
その夜アフラーシヤーブは娘が男の子を生んだという夢を見たのでピーラーンに使いをやって子供を連れてこないのか聞いた。ピーラーンはシヤーウシュを殺したばかりかその子供まで殺して未来の不幸を招かぬように荒地に捨てたと伝えた。するとアフラーシヤーブはひそかに残忍な行いを恥じた。
カイ・クスラウは百姓の家ですくすくと育った。彼は早くから驚くべき才能を発揮した。猛獣を駆り立てることに巧みで、ピーラーンはこれを聞いて喜び王者の血をひいた者は決して自分の血統を辱めないといった。カイ・クスラウを訪ねて立場が危ないから気を付けるように懇ろに戒めた。
それからアフラーシヤーブのところに行き荒野に捨てた子供が大きくなったこと、全くの白痴であるため安心してよいことを話した。しかしアフラーシヤーブは安心できず一度あってみたいと言った。ピーラーンはカイ・クスラウの許に行きアフラーシヤーブの前では気が狂ったふりをするように言った。カイ・クスラウは王子の衣をつけ、黄金の冠を頂いて王の前に出た。王は自分のふるまいをひそかに恥じながら色々と尋ねた。
カイ・クスラウはおかしいほど粗暴な態度で、辻褄の合わぬ答えばかりした。王は微笑んでこんな気違いは生かしておいても大丈夫だと思い数々の贓物をして母の許へ帰ることを許した。クータンの住民はカイ・クスラウを見て非常に喜んで心から祝福をした。
カイ・カーウスは自分の息子シヤーウシュの悲惨な最期を耳にすると、深い苦悩に投げ込まれ多くの戦士達も愛すべき王子の死を悼んだ。ルスタムは激しい悲しみに駆り立てられたように兵を率いて、カイ・カーウスの館に馳せつけた。
ルスタムは立派な者となる種が王の意地のためむなしく風に吹き散らされたのはスーダーバに心を迷わしたせいで、王は女の奴隷で男子の幸福を妨げることを知らないのかと責めた。王は反省した。ルスタムはスーダーバの首を刎ねた。
そしてルスタムは兵を率いてアフラーシヤーブを討つためツーラーンに攻め入った。アフラーシヤーブの息子スルカがむかうったが首を切り落として城門に曝した。アフラーシヤーブは猛獣のようにルスタムに戦いを挑んだ。アフラーシヤーブのピールサムはルスタムと一騎打ちをしようと野心を起こした。
アフラーシヤーブはこれを励ましてピールサムはルスタムを斬りつけたがルスタムは髪の毛一本乱れずピールサムを鞍から引き落としてアフラーシヤーブの前にもって行き足元に投げつけシヤーウシュに対する裏切りの罪で滅びると罵った。アフラーシヤーブの戦士はルスタムを恐れて誰も渡り合わなかった。アフラーシヤーブは自ら武器をとってルスタムに打ってかかった。ルスタムはその馬をうちアフラーシヤーブを大地に落とした。
アフラーシヤーブはルスタムに生け捕りになりそうなところを他の馬に跨って一散に逃げ出した。ルスタムはツーラーンを征服し七年間治めた。それから自分の領地に引き返したがどうしてもカイ・クスラウのことが気にかかってたまらなかった。
戦友のギーブに頼んで捜索に出かけてもらった。ギーブは案内者を頼んで探し回りチーンの国境で一人の少年が盃を手に泉のほとりに座っているのを見つけた。ギーブはそれがカイ・クスラウのような気がして声をかけると、少年はギーブを知っていた。
ギーブがどうしてわかったのか尋ねると彼は父の館の画廊に戦士たちの肖像がありそれをみて深く心に刻みついていると答えた。ギーブはカイ・クスラウを馬に乗せ母のファランギースのもとに連れていき親子ともにペルシアへたびに出た。
カイ・クスラウが逃げ出した知らせがピーラーンの耳に入ると二人の世話をしていただけにひどく腹を立てて家来のクルバードに三百の兵をつけ後を追わせた。ブルガリアの近くでギーブたちに追いつき戦ったが逃げ帰って来た。ピーラーンは怒りこれは恥ずかしい敗北と罵った。
今度は自分で兵を従え行く手を追った。ファランギースがそれを見つけてカイ・クスラウが戦おうとしたが、ギーブは彼が世界の王者となるので自分が生きている限りは戦わせないといい様子を見ているように諭した。
ピーラーンはギーブを見て罰を与えると言ったがギーブは兵が一人でも生き残ったら自分を臆病者と呼ぶがいいと答え、それを聞いたピーラーンは真っ青に顔色を変えて、ギーブとは戦わないと言った。
ギーブはピーラーンに躍りかかって首に繩をかけた。そして敵勢を駆け散らし、ピーラーンをカイ・クスラウの傍に引っ張ってくると彼は驚き喜びピーラーンが自分たちのためにしてくれた親切なふるまいをギーブに話した。
そしてギーブにピーラーンの命を助けてくれと頼むとギーブはピーラーンの血で大地を染めるという誓いを立てたと言って聞かなかった。カイ・クスラウはじっと考えてピーラーンの耳を切ってその血で大地を染めたらいいと言った。
ギーブはカイ・クスラウの賢くて慈悲深い申し出に従い耳を切っただけでピーラーンを解き放った。ピーラーンはアフラーシヤーブの館へ行きカイ・クスラウが逃げ出したことを知らせた。アフラーシヤーブは三人の人相書を造りジーフーン河の渡し主に届けその人相の人間を渡さないように言いつけた。
三人はジーフーン河の岸について渡し守に舟を出してくれと頼んだ。船賃に馬をくれ、ファランギースをくれ、少年の冠をくれと言ったがギーブは断り金ならいくらでも払うと言ったが金はいらないから鎧をくれといいそれも断ると渡し守は自分で勝手にわたるがよいと言い出した。
ギーブはカイ・クスラウ親子を励まして、滔々たる急流に馬を乗りいれ神の加護によって難なく向う岸についたので渡し守は呆気にとられ突っ立っていた。やがてアフラーシヤーブの軍勢が河のほとりについたがすでに三人が渡った後だった。
大急ぎで渡し守に舟を用意するように命じた。フーマーンは味方の人数に制限があり向うに敵がどれだけ隠れているかわからないため引き上げるように進めた。アフラーシヤーブは仕方なくツーラーンに引き返した。
ギーブはペルシアの境に入ると、使いを遣ってカイ・カーウス王にカイ・クスラウが安全に到着したことを報告した。王は非常に喜んで、グーダルズに儀仗兵指揮させて、カイ・クスラウを迎えさせた。館に付くと王は顔に熱い接吻をした。
そして自分のと同じ玉座にカイ・クスラウを座らせて国中の貴族や戦士たちを呼び集めて、服従を誓わせた。しかしツースだけは頬を膨らませて館から引き下がった。そしてカイ・カーウス王の息子のファリーブルズの許を訪れた。
ツースはファリーブルズには服従を誓うがカイ・クスラウには従えないと言った。それをグーダルズは腹を立て兵を集めてツースを襲おうとした。ツースも軍勢を集めグーダルズが来たら返り討ちにしようとした。カイ・カーウスはその噂を聞くとひどく心を痛めて二人を館に召しだした。
ツースは陛下を尊敬しもしもの時はファリーブルズに仕えるのでカイ・クスラウには服従できないと言った。グーダルズはシヤーウシュは王の長子であるためその息子のカイ・クスラウを立てるし国の貴族もみなそうしていると言った。
こうして二人は言い争い始めたので王は二人に沈黙を命じた。グーダルズが王に向かってカイ・クスラウとファリーブルズのどちらが王者にふさわしいか決めるように願った。王はしばらく考えて、カイ・クスラウとファリーブルズを呼び出して、バーマンの悪魔の城を同じ数の兵で攻め落とした者をペルシャ王とすると言った。
ファリーブルズはこれを喜び先に遣ってほしいと願った。しかし、彼がバーマンの城に押し寄せると城の周囲には猛火が炎々と燃えてすさまじい風に紅蓮の炎がくるくると渦を巻いていた。兵は熱気を冒して攻めたが門がなくあちこちと駆けまわっているうちに熱風で死んでしまった。ファリーブルズとツースはしおれ切って館に引き返した。
次はカイ・クスラウがグーダルズとギーブを補佐に兵を連れて城に近づいた。カイ・クスラウは燃え立つ焔が大空を赤く染めているのを見て悪魔の妖術と悟り布に神の名を書いて、それを投槍の先に結び付けた。ギーブがそれを捧げて神の助けを祈りながら、進んでいった。すると焔は消え失せた。
カイ・クスラウは兵に言いつけて、雨のように矢を放たせた。矢は城の中に飛び込み悪魔を倒して。すると空のかなたから一筋の光明が迸って、霧を追い退けた。たちまち巨大な城門が現れて先を競って逃げていく悪魔の姿が目に映った。
カイ・クスラウの兵は城門から駆け込み、分捕品を携えて凱旋した。カイ・カーウス王は吉日を選んでカイ・クスラウに王者の冠を頂かせた。
多難の小王子~魔城の攻めくらべまで
ツース、ギーブ、シーウェルを取り合う。カイ・カーウスが自分のものにしてしまう。
シヤーウシュが生まれる。ルスタムの許で学ぶ。
スーダーバ、シヤーウシュに言い寄る。父の妃なので断る。
スーダーバ、シヤーウシュを怨み讒言で王に訴える。
カイ・カーウスはスーダーバの嘘を見抜くが許す。スーダーバはシヤーウシュの罪を言い張る。
カイ・カーウス、シヤーウシュを熱火の刑にかける。シヤーウシュは無傷。
アフラーシヤーブペルシャに攻める。ルスタムを補佐にシヤーウシュ迎え撃つ
アフラーシヤーブ夢の啓示から和睦を求める。シヤーウシュ百人の人質とペルシャから奪った土地を返すことで承知。
カイ・カーウス星占師からツーラーン討伐の予言を受け和睦に怒る。シヤーウシュ父の無情を恨む。
シヤーウシュ三百の戦士とアフラーシヤーブの許へ鞍替え。
ピーラーンの娘ジャリーラと結婚。
アフラーシヤーブの娘ファランギースとジャリーラの勧めもあり結婚。クータンを領地にもらう。
ガルシワーズ、シヤーウシュを恨む。讒言の手紙でアフラーシヤーブを騙す。
アフラーシヤーブシヤーウシュを討伐する計画を立てる。
シヤーウシュ、ペルシアに逃げようとする。妻は身籠っている。男児が生まれたらカイ・クスラウとなずけるように告げ三百の兵士とペルシアへ発つ。
ガルシワーズに追い戻される。ファランギース嘆きアフラーシヤーブを説得。
アフラーシヤーブ、ガルシワーズにシヤーウシュの首を刎ねさせ返り血を黄金の桶に入れる。シヤーウシュの血から木が生える。霊妙な出来事。(シヤーウシュの木)
友ピールサムは亡骸を葬った。クータンの民はシヤーウシュの死を悼みアフラーシヤーブを呪った。
アフラーシヤーブは娘ファランギースとシヤーウシュの子供が生まれる前に娘を殺すように言った。
ピーラーンは王を説得しファランギースの面倒を見た。子供が生まれたらアフラーシヤーブのところに連れてくるように言われた。
生まれた男の子をカイ・クスラウとなずけた。アフラーシヤーブに隠しカルール山の百姓に育てさせた。
カイ・クスラウが育ちピーラーンは王にカイ・クスラウが白痴と告げ会わせた。
カイ・クスラウはピーラーンに言われて阿呆な回答をした。王は贓物を渡して母の許に返した。
カイ・カーウスはシヤーウシュの死を聞いて嘆いた。ルスタムがスーダーバに心を迷わせたせいだと非難。
ルスタムがスーダーバを殺す。ルスタム、アフラーシヤーブ討伐へ。
ルスタム、スルカを殺しルスタムと一騎打ちの野心を起こしたピールサムを討伐。アフラーシヤーブと一騎打ちで負かせる。
ルスタム、ツーラーンを七年治める。ギーブにカイ・クスラウを探させる。
ギーブ、チーン国境の小川でカイ・クスラウと出会う。ファランギースもつれてペルシアへ。
カイ・クスラウを連れ戻すためピーラーンはクルバードを遣わし一行の後を追う。
ブルガリアで追いつき戦闘、クルバード負けて帰る。ピーラーン自ら出陣。
ピーラーン拘束、カイ・クスラウが恩をギーブに話し耳を切って釈放。カイ・クスラウは(利口)
ピーラーン、アフラーシヤーブに密告。人相状を書き河を渡らせないようもくろみ。
ギーブ一行舟守に舟を出してもらえず自力で渡る。アフラーシヤーブ追いつく。
フーマーンが敵兵を考慮し、アフラーシヤーブ、ツーラーンへ引く。
ギーブ一行ペルシアにつき、カイ・カーウスに無事を報告。王はカイ・クスラウに従うよう家来を集め誓わせた。ツースは万一の時はファリーブルズに仕えると言ってそれを拒否した。グーダルズがそれを聞いてツースとの内乱の危機。王は二人を招集した。
ツースはファリーブルズ、グーダルズはカイ・クスラウと意見が分かれて王にどちらが王者にふさわしいか決めるよう求める。
二人にバーマンの魔城を攻め落としたほうを次の王者にすると言った。ファリーブルズは喜びツースと先に出陣。失敗。次にカイ・クスラウ、グーダルズとギーブを補佐に出陣。見事分捕り品を携え凱旋。カイ・カーウスはカイ・クスラウに冠を渡した。
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ツーラーン王征討
カイ・クスラウ王がペルシア王になり領内の太守たちが祝儀のため都に来た。王は饗宴を催した後、ツーラーンのアフラーシヤーブを討つことに力を合わせるよう頼んだ。これに皆応じた。主な勇士はグーダルズ、ツース、グスタハム、ファリーブルズ、ギーブだった。
進軍が始まり王はツースとファリーブルズに王の兄ファルードがブカーラーに城を立ててジャリースと一緒に住んでいるため領地を通るときは片隅を通るように言った。ファリーブルズはその通り片隅を通ったがツースは砂漠を通るのが嫌で城のある所をまっすぐ通った。
ファルードは軍勢を見るとツースが自分の城を攻めると思い進軍を阻もうとした。義子を使いにたて戦いを挑むわけではなく通りたいだけと伝えた。ファールードは自分を騙す口実と思い戦いをはじめ彼を殺した。それを知るとツースは怒り城を囲んだ。
ファルードは矢を撃ってツースの馬を射てツースは地面に投げ出された。ギーブは仇をうとうとしたが同じく馬を撃たれた。ギーブの子ビーザンはファルードに迫ったがファルードは城の中へ引き上げ壁の上から大きな石の雨を降らしたため痛手を追って引き退いた。
その夜ファルードの母が城に火がついて兵たちがことごとく焼け死んだ夢を見た。ファルードに語ると死は恐れていない、父親のところに行くだけと答えた。奇手は城門を打ち破って入ってきた。ファルードはビーザンと悪戦をしてバーラームというペルシアの武士が物陰からでて頭を殴られて死んだ。母ジャリースは屍に縋りついて泣き匕首で自殺した。
カイ・クスラウはファルーズの死を耳にすると腹を立ててファリーブルズにツースが命令に背いて兄とその母を殺した旨、ツースをとらえて送ってほしい旨を手紙で送った。ファリーブルズはすぐにツースを縛り送り届けた。王はツースを土の牢に閉じ込めた。
ペルシア軍とツーラーン軍の戦いが激しくなった。ツーラーンの勇士ピーラーンはたびたびペルシア軍を打ち破った。アフラーシヤーブは喜んで恩賞を与えて励ました。たびたびの敗北に勇気を失ったペルシア軍の大将ファリーブルズは夜にまぎれてカイ・クスラウのもとに軍を引き上げた。
王は酷く悩みルスタムに、ピーラーンを打つよう頼んだがルスタムはその役はツースで十分といい、アフラーシヤーブが乗り出して来たら自分が迎え撃つと言った。王はツースを監禁から許しグーダルズと一緒にピーラーンに当たらせた。両軍はそれから七日七夜続いたが勝敗がつかなかった。
ピーラーンは魔術師に大吹雪を起こさせてペルシア軍を襲いそれに乗じてフーマーンたちと攻めかけたのでペルシア軍は敗軍した。ツースとグーダルズはたまりかねて、吹雪から守ってもらえるよう神に祈った。すると一人の神の人がどこからとなく現れて武将ルーハームの目の前に現れ風雪の降っている山を指さした。
ルーハームは馬に乗り山の頂に駆け上ると、妖術を使っている男がいたのでこれをたたいた。すると旋風が起こり闇を裂き吹雪がやんだ。それに勢いづいて戦いを始めたが戦況は良くなくハマーワン山に引き上げてその頂上の城に立てこもった。
カイ・クスラウ王は非常に気を揉んでルスタムとファリーブルズにこれを助けさせた。ルスタムはすぐに城の中に入って、全軍を指図することになった。ピーラーンはアフラーシヤーブに手紙を送って、ペルシア軍をハマーワン山の城に追い込んだことを伝え援兵を頼んだ。
アフラーシヤーブは他国から来ていた三人の同盟者を送ることにした。一人はカシャーンのカームース、一人はサグサールのシャングル、一人はチーンの王族だった。ピーラーンはカームースにルスタムだけは手ごわいことを伝えた。
翌日、戦いが始まった。ルスタムは二三本の矢を腰に挟んで、敵軍から飛び出してきた。アシュカブースにツースの言いつけで馬を分捕りに来たと言った。ルスタムは矢で馬を射殺した。そして笑うと、アシュカブースは怒りに我を忘れて箙にある限りの矢を浴びせたがルスタムはびくともしなかった。
さらに矢を撃ちアシュカブースの胸を貫いた。あくる日カームースが飛び出した。ルスタムが迎えカームースは捕繩を投げラクシュの頭をとらえたがルスタムは縄を摑んで引いた。引き合いの末縄が切れカームースはあおむけに倒れた。ルスタムはすかさず捕繩を巻き付け、引き摺った。
ルスタムにツーラーン軍の猛将が討たれ、ピーラーンは堪り兼ねてルスタムに和議を申し込んだ。シヤーウシュを殺した主な人々を殺すこと、シヤーウシュをアフラーシヤーブに讒言したガルシワーズを殺すこと、たくさんの償い金をカイ・クスラウに払うことで申し込みに応じようとした。
ピーラーンは会議を開いたが同意しなかった。サグサールは激しく刎ねつけ自身でルスタムと戦ったが馬から突き落とされた。ルスタムは続いてチーン王の本陣に駆け込んで、王冠が似合わないこと、カイ・クスラウ王の前に引っ張っていくから像や玉座を渡したほうが良いと罵った。
チーン王は怒り兵に矢を雨あられのように放たせた。ルーハームとギーブとがルスタムを心配して加勢したがルスタムは問題ない、チーン王は大軍だがどうしても生け捕りにして分捕り品とカイ・クスラウの許に持っていくといった。
ルスタムは片っ端から敵兵を倒した。チーン王は怖気づきイラン語に通じている戦士に言いつけシヤーウシュの虐殺に関与してないので仲直りしてくれと言った。ルスタムは象の群れと王冠を渡さなければ和睦しないと返事した。
チーン王はこの返事にルスタム大声で罵った。ルスタムはそれを聞いて怒り捕繩でチーン王を白象から引き下ろし剣の一閃で首を落とした。ツーラーン軍は親は子をすて子は親を忘れ引き退いた。ルスタムはその機にシヤーウシュの領地クータンに攻め入った。
アフラーシヤーブは日に日に領内がルスタムに荒らされるのに心を痛めてピーラーンに相談した。ピーラーンはブラードワンドならルスタムに引けをとらないと答えた。アフラーシヤーブは手紙を送って助けを求めた。ブーラードワンドはこの依頼を名誉に思い助けに来た。
ブーラードワンドはギーブ、ルーハームとビーザンが捕繩にかかった。それを見た三人の父グーダルズはルスタムに助けを求めた。ルスタムとブーラードワンドは猛闘を始めた。ブーラードワンドは棍棒でルスタムを殴った。ルスタムは王を守護することに誓って神に勝利を祈った。
ブーラードワンドは棍棒を捨てて、剣でルスタムに斬りかかったが鎧がはねのけたので組打ちをしようと言い出した。ルスタムが応じると双方の軍勢は両勇士のために場所を明けた。アフラーシヤーブはルスタムを倒したらすぐ短剣を胸に突き刺したほうがいいとささやいた。
しかし、ルスタムはブーラードワンドを投げ出した。息が絶えたと思い込んだルスタムはラクシュに跨りかけ去った。しばらくしてブーラードワンドは起き上がり、大急ぎでアフラーシヤーブの許にかけもどりルスタムの恐ろしさ、自分が死んだふりをしてようやく命拾いしたこと、争うのは無益だと言い切った。
ルスタムはブーラードワンドに騙されたと気が付くと引き返しツーラーン軍の中に駆け込んだ。ブーラードワンドはアフラーシヤーブに一言も言わずに軍勢を連れて逃げた。ツーラーン軍は勇気を失って茫然とした。アフラーシヤーブは天幕も馬も武器も財宝もそのままに退陣した。
ルスタムは分捕品を王の許に送り届けることにし残りは勇士たちに分けた。それからカイ・クスラウの館に赴くと王は狂喜して最高の名誉と尊敬をもって迎えた。そして黄金の槽に伽羅と麝香、ルビーと美しい服、王冠と耳輪を捧げた百人の麗しい少女、百頭の馬、百頭の駱駝を与えた。そしてザーブリスターンに帰って行った。
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消える怪魔
カイ・クスラウが花園で戦士を集めて酒宴を催した。一人の百姓が現れて一頭の立派で乱暴な野馬が王様の厩に入り馬をさんざんに痛めつけたと話した。その話の意見を戦士たちに聞き王はルスタムに退治を頼むことにした。ルスタムは快く引き受け百姓を案内者にして、探し回った。
四日目に野馬に巡り合った。捕繩を投げたが野馬の姿が消えた。ルスタムは驚き、怪魔のアクァンだと見当をつけた。剣を振り上げたり槍を突き出したりする途端に消えてしまう。ルスタムは昼を三日、夜を三夜怪物を追い回し疲れた。小川のほとりの草原にラクシュを放って大地でぐっすり眠った。
遠くでルスタムを見ていたアクァンはルスタムが寝たのを見て、彼が寝ている周りの地を掘った。ルスタムを寝かしたまま地面を持ち上げて、歩き出した。ルスタムが目を覚ますと怪魔は笑い出し海の中か山に投げ出すか選ぶように言った。ルスタムはしまったと思ったが、悪魔が人間の望むことと反対のことをすると聞いていたため山なら猛獣に食われても骨だけは残るため山を選んだ。
すると怪魔はルスタムを高い岸の上から海の中へ投げ込んだ。すると鰐が襲ってきたがルスタムが剣を抜いて首を切り落とした。それから磯部に泳ぎ着き神の冥助に感謝した。ルスタムは元の小川に戻るとラクシュがいなくなっていた。探しているとツーラーンのアフラーシヤーブの馬の群れに混じっているのを見つけた。ラクシュに跨り馬の群れを一緒に連れ去ろうとすると、番人がそれに気づいた。
番人は馬泥棒を追いかけたが、ルスタムが名乗ると番人は縮み上がって逃げ去った。丁度その時アフラーシヤーブが年に一度の検閲にやってきたので番人がルスタムに馬の群れが盗まれたことを話した。するとアフラーシヤーブは兵を率いてルスタムの後を追っかけたが撃ち退けた。
ルスタムは馬の群れをカイ・クスラウ王に献上し、小川のほとりに赴いた。怪魔はびっくりして死から起きたお前の体は火打石か鉄かと問うた。ルスタムは剣の一撃で怪魔の首を胴から切り離した。その首をカイ・クスラウ王に届けると王はその物凄い面相に驚いた。
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悲惨な恋
イルマーン(アルメニア)の人々が、カイ・クスラウ王の許に訪ねてきて、イノシシの群れが畑や果樹園を荒らしまわると申し出た。王は戦士たちと酒を飲み宴会をしていた。戦士のビーザンは猪退治を引き受けた。ギーブは反対して二人は言い争った。王に裁決を乞うとビーザンにグルギーンをつけて二人でイランとツーラーンの間へ行き夥しい猪を殺して人々の難儀を救った。ビーザンは猪の牙を王に送り仕事の証拠とすることにした。
グルーギーンは若者の豪勇が妬ましくなり、彼を亡き者にしようと思った。ビーザンが酒によった時を見計らいせっかくの遠征だから近くの花園でアフラーシヤーブの娘マニーザがいると説きたてた。ビーザンはすっかり興奮してその花園を訪れた。マニーザはビーザンに恋心を起こして歓待した。彼女は、天幕にビーザンを案内して、その体に薔薇水や麝香を振りかけたり葡萄酒を与えたりしビーザンは歓楽の内に三日過ごした。
マニーザはビーザンと別れることを厭って眠薬を飲ませた。ビーザンが眠っている間に変装させて、誰にも気づかれぬようにアフラーシヤーブの館に運び込んだ。眠りから覚めたビーザンは自分が敵の館にいることを知って、逃げ出そうとした。マニーザは引き留めて、歓楽に耽ってくれと酒をだした。ビーザンは惹かれてうかうかと日を送り迎えていた。
暫くして二人のことがアフラーシヤーブに知られた。彼は苦しみ怒って、王者でも娘を持つことは不幸だ、女のために地獄の苦しみを受ける。自分の娘が敵の男とみだらな行為を行うのは恥ずかしいと言った。弟のガルシワーズに言って、ビーザンを殺すように言いつけた。
とある密室にガルシワーズが行くと立派な服装で後宮の少女たちに取り巻かれてマニーザと酒を飲んでいるビーザンがいた。ビーザンはガルシワーズを見ると剣を抜いて切り殺すと言った。ガルシワーズはアフラーシヤーブの前で言いたいことを言えと言い、王の前に連れて行った。
ビーザンは寝ている間に運び込まれたこと、自分が魔女のとりこになったこと、マニーザも魔女にたぶらかされたといって自分の罪を否定した。アフラーシヤーブはビーザンを縛り絞首台に連れて行くようにガルシワーズに命じた。ビーザンを絞首台に括りつけようとしたとき老若男女が騒ぎ立ててきた。
そこへピーラーン老人が通りかかった。彼はビーザンになぜ殺されようとしているか訊ねた。ビーザンは自分が老友のグルギーンに騙されたことを話した。これを聞いたピーラーンは自分がビーザンの父ギーブと戦って危ない目にあったときにファランギースのなだめによって死を免れたことを思い出して、大急ぎでアフラーシヤーブの前に駆けつけ許したほうがいいと諫めた。
しかしアフラーシヤーブはビーザンがどうしても許されない罪を犯したこと、自分の顔に泥を塗られたため生かして置いたら世界が自分を軽蔑すると考えた。ピーラーンはなだめてビーザンを洞穴に閉じ込めるように進めた。王はガルシワーズを呼んでビーザンを逆さ吊りにしてマニーザと一緒に閉じ込め怪魔アクァンが海から引き上げた大石で穴をふさぐように命じた。
マニーザは自分の恐ろしい運命に狂気のように泣き叫んだのでアフラーシヤーブは哀れに思い衣や宝玉を剥ぎ取り洞穴の傍に座らせて置くだけにした。マニーザは岩の割れ目から時々食糧や水を差し入れて愛人の命をつないでいた。グルギーンは日数が経つに連れて自分のしたことを悔い始めた。
ビーザンの行方を捜し歩いたが彼の馬を見つけただけで手がかりがなかった。グルギーンは一人ペルシアに帰った。老勇士ギーブは自分の息子の行方がわからなくなったと聞くと悲しさのあまり衣を裂き髪の毛をかきむしって頭に灰をかぶった。グルギーンは嘘をついて大鹿に出会ってビーザンがそれに捕繩をかけたらそれを引き摺って幻のように消え失せたと話した。
ギーブはこれを信じなかったのでグルギーンの髭をつかんで、小突き鞭で殴りつけた。それからカイ・クスラウ王の前に出て、ビーザンの行方がわからなくなったことを話すと王は星占師にビーザンの運命を占わせた。これを聞いて王は「世界の秘密を知ることのできる杯」を取り出してじっと見つめた。
するとビーザンが洞窟に吊り下げられていてマニーザが悲しげに座っている姿が浮かび出た。王はギーブにビーザンは生きていると励ました。王はすぐにルスタムに手紙を出してビーザンをアフラーシヤーブから救い出すように頼んだ。ルスタムはせっかく楽しんでいた平和を離れたくなかったが、すぐに出てきた。
王はルスタムに必要な兵を聞いたが、商人に変装していくため必要ないと答えた。ルスタムは千頭の駱駝に宝石綿欄その他商品を積んで、馭者の服装をした戦士たちとたびに出た。グルギーンもルスタムのとりなしで仲間にくわえられた。隊商がツーラーンに入り洞穴に近づくとマニーザが駆けつけてきて、ルスタムにビーザンがひどい目にあっていることがペルシアの宮廷に知られていないか訪ねてきた。
ルスタムは不機嫌そうに、私は商人でそれはわからないと答えた。マニーザはがっかりして激しく泣き出した。ルスタムは驚き怪しんでなぜ泣くのか訊ねた。マニーザは溜息をついて、自分がアフラーシヤーブの娘でビーザンと恋に落ちて父に知れてビーザンが洞穴に吊り下げられたことを話した。
ルスタムは急に元気づいて食べ物はどうしているのか尋ねた。マニーザは岩の割れ目から水とパンを差し入れていると答えた。ルスタムは蒸し焼きの鳥を持ち出して自分の印のついた指輪を入れてマニーザにこれを差し入れるように頼んだ。マニーザがそれを差し入れるとビーザンは誰が送ってくれたか訊ねた。
マニーザはイランの隊商の親方と答えた。ビーザンは食べ物の中にルスタムの名を刻んだ指輪を見てうれしさに微笑んだ。マニーザはどうして微笑むのか訪ねるとビーザンは秘密を守るなら話すと言った。マニーザは身も心もあなたに捧げたと答えた。ビーザンはルスタムが隊商の親方で助けに来てくれたと話してマニーザに一番早く助けることのできる方法を相談してくれと頼んだ。
マニーザはルスタムのところに行って大きな火を焚いて目印にすることを申し合わせた。ルスタムは夜になるのを待って、火の光を目当てに七人の戦士と一緒に洞の傍に忍び寄った。するとルスタムに殺された怪魔アクァンの子がルスタムに復讐しようと思い待ち受けていた。
彼は大きな樹の根をルスタムに打ってかかった。負けそうになると空中に消え失せて大いにルスタムを悩ましたがとうとうその鋭い剣に斬られた。ルスタムはすぐに洞穴の石を抱えて、野原に投げ出すと大地は揺れ動いた。ルスタムは捕繩をおろしてビーザンを引き上げ鎖を斬った。
二人は抱き合ったまま言葉もなかった。その夜ルスタムは七人の戦士と一緒にアフラーシヤーブの館に押し寄せた。彼らは門番を殺し守備兵を倒して奥へ入った。アフラーシヤーブは狼狽して館から逃げ出した。夜が明け彼は軍勢を集めルスタムを襲ってきた。
ルスタムは駱駝の馭者に扮した一千の兵士を率いて合戦した。戦いはペルシア軍の勝に帰した。ルスタムは数々の分捕り品を駱駝に積んで、ビーザンやマニーザを連れてペルシアに帰った。王はルスタムに莫大な恩賞を与えて、マニーザにも贓物をした。そして華やかな酒宴を催した。
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魔女の接待
アフラーシヤーブがツーランに逃げ帰ってわが身の不幸を嘆き悲しんでいると、スーセンという魔女が館に訪ねてきた。魔女は王に戦争は王に失望と悲哀を齎すだけで役に立たない、妖術で王の役に立つから信じてくれといった。アフラーシヤーブの言葉を信じなかったがスーセンの不思議な技を見ると彼女のことを信じてペルシア軍を痛めつける役割を任せた。
スーセンは大勢の兵を連れてザーブリスターンに出かけてとある館に財宝を運び接待所を造り道を通る旅人たちに贅沢な食べ物を与えることにした。一方ルスタムはアフラーシヤーブを破るとザーブリスターンで饗宴を催して戦士たちを招いた。グーダルズとツースは日頃仲が悪く酒宴が酣になると罵り合いを始めた。
ツースは自分の先祖がファリーズーンでナウダルの子であることを自慢しグーダルズの父がカーワであることを罵った。グーダルズは負けじとツースの無知を罵った。ツースはかっとなり剣を抜いてグーダルズに斬りつけようとした。それを見たルーハームがツースをなだめた。ツースは席を蹴ってイランに帰った。
席を外していたルスタムが帰ってきて喧嘩を聞くと機嫌を損ねてグーダルズを睨みつけてツースは客人だから詫びを入れて連れて帰るように言った。グーダルズが出立するとギーブも席を立ち二人だけでは碌なことがないから自分もついていくと言った。ルスタムはそれを許した。ビーザンもついていくと言ってギーブの後を追った。ルスタムはそれでも気がかりで自分の父ザールと息子のファラーマルズに彼らの後を追うように頼んだ。
道を急いでいたツースは魔女スーセンの館に近づくと大勢の料理人が忙しく働いていてうまそうな食べ物や菓子を作っているのを見た。ツースはその傍にあゆみよって、誰に使われているか訊ねた。料理人たちはツーラーンの商人の奥方で誰でも通るものにご馳走を出していると答えた。
ツースは腹が減ったので馬から降りて館に入ろうとすると乙女が一間に座っていた。ツースは彼女の前に座り身の上を訊ねた。乙女は自分が歌女で金持ちの商人が恋をして結婚したが夫が死にアフラーシヤーブが館に引き入れようとしてそれが嫌で逃げて来た。ペルシアのカイ・クスラウの良い噂の故侍女にしてくれるならばぜひお願いしたいと言った。
ツースは乙女が魔女と気づかずその言葉を信じて女を王の許に届けようと決心した。ツースは運ばれたご馳走を心行くばかり楽しんで酒を飲み眠っているとアフラーシヤーブの武将ピールサムが現れて彼を縛めて自分の城に運び込んだ。続いてグーダルズやギーブ、ビーザンが同じ手に引っかかった。
最後にルスタムの父ザールが来たが彼は罠に乗らずに目を見開いてあたりを見回した。すると一人の男があたりを憚り歩み寄って数人の戦士が生け捕りにされたことを伝えた。ザールは怒って、魔女をとらえようとしたが、彼女は悟りピールサムの城に逃げ込んだ。ザールはルスタムに使いを送り、ピールサムの城に押しかけて行って、堅固な門を叩き壊した。ピールサムは城から出てザールと格闘を始めた。ザールが自分の老齢に抗っていると、ファラーマルズがきてピールサムと渡り合ったが日が暮れて一時中断した。
翌朝ルスタムがバルタを連れてやってきた。ピールサムを呼び掛けて一騎打ちを挑み二人は戦ったが勝負はつかなかった。翌日アフラーシヤーブが駆けつけてきてルスタムはバルタに命じて迎え撃たせ自分はピールサムと戦った。ルスタムはピールサムを倒した。
そのうちにカイ・クスラウの軍勢が駆けつけてきた。アフラーシヤーブは馬を陣頭に進めてカイ・クスラウに一騎打ちを求めた。カイ・クスラウはこれを受けたが、戦士たちは一騎打ちを押し止めた。カイ・クスラウはシヤーウシュの仇を取らねばならぬと勇んだがルスタムが血涙を流して王が一騎打ちをするならば自決すると言って止めた。
王はやっと決心を翻してバルタに戦わせることにした。バルタはアフラーシヤーブに以前仕えていたためアフラーシヤーブは罵った。バルタはシヤーウシュを殺した罪によるものだと言い返して、アフラーシヤーブに矛を向けた。両軍は戦いを始めたがルスタムによって総崩れとなりアフラーシヤーブは逃げ出してしまった。
カイ・クスラウたちが凱旋するとルスタムは自分が四百歳で戦いに疲れたためしばらく休むと告げ代わりにファラーマルズとバルタを遣うように言ってザールと一緒にザーブリスターンに引っ込んだ。
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若い英雄と讒言
グシュタースプは勢力が盛んで数々の小王は挙って貢物をしていたがチーンとマーチーンの王アルジャースプは傲然と睥睨していた。アルジャースプの軍隊は妖魔や悪魔などから成り立っていた。グシュタースプはそれを恐れ年貢を治めていた。そのころザルズーシュトという予言者がグシュタースプの館にとどまっていた。
彼は神を信じることが篤く学芸に精通していた。彼は天国にいたこともあれば地獄に訪れたこともあると言う。神に祈り人間を天国にも地獄にも送ることができると称していた。彼には天女が従者となっていて、天国の秘密を知らせてくれるとも言っていた。彼は神が教えを示すために与えたゼンドアヴェスタという経典を持っていた。
神にまみえたときに使った梯子も持っていた。グシュタースプ王はザルズーシュトの重い病を立ちどころにいやしたり、未来の世の神秘を知ることのできる樹を生え出でさせたりする奇蹟を見て、心から心腹した。ザルズーシュトがゼンドアヴェスタを王に見せてこの書に従うならば天上の幸福を享けることができると言った。
王はその言葉を信じて拝火教を奉ずるようになった。ある日ザルズーシュトがグシュタースプ王にアルジャースプに貢物をするのか訊ね神が味方しているからアルジャースプのことは征服することができるといった。これを聞いて王はアルジャースプに貢物をやめると手紙を書いた。
アルジャースプはグシュタースプがザルズーシュトに惑わされて、昔からの宗教を捨てたと言い、二人の魔人にザルズーシュトから離れて元の宗教に戻るようにそうでなければ正しい道に戻すため戦争を企てるという手紙を返答した。グシュタースプはこれに対する返事の前に家臣とザルズーシュトを招いて集会を開いた。
大臣のジャーマースプは、考えるように勧めたが、ザルズーシュトは戦うしかないと言い切った。王はザルズーシュトの言葉を受け入れて使いのものを追い返してアルジャースプの高慢が自分の身に降りかかるもので戦争を買って出る旨を答えた。アルジャースプはすぐに大軍を率いてイランに攻め込んだ。
ザルズーシュトはグシュタースプにジャーマースプに星占いを行うように命じた。ジャーマースプは王を人のいないところに連れ出して同胞、親類、戦士がたくさん死ぬが最後はグシュタースプ王が勝つと言った。王は最後の勝利に励まされ勇敢にチーン軍を迎え打つことにした。
占の通りたくさんの人が死んだがグシュタースプの公子ザリールは群がる悪魔を薙ぎ払いアルジャースプの本営にたどり着いた。アルジャースプは気を焦って兵どもを励ましザリールを打ち取れば恩賞を取らすと言った。ビーディラフシュという魔人が飛び出しザリールを倒した。グシュタースプは心を痛めてザリールの仇を打つものを探した。
王の子アスファンディヤールが復讐を誓った。王は喜んで敵を倒したら玉座を渡すと誓った。アスファンディヤールはビーディラフシュを見つけて戦いを挑んだ。魔人は短剣をさっと突き出した。アスファンディヤールはそれを抑えて、槍を揮い胸を突き刺した。見方はこれに勢いをつけて、チーン軍に襲い掛かった。チーン勢は一万一千六十三人の大将と九十万の兵を撃たれて逃げ出した。戦勝を喜ぶ声が天地に満ちた。
アスファンディヤールは父に召されて、牛の頭のついた矛を持ったまま、悠々と現れた。グシュタースプはアスファンディヤールの額に王冠を飾った。グシュタースプはアスファンディヤールにこの機に乗じて四方の国々を征服するように勧めた。ザルズーシュトも拝火教を世界に広めたいと思いから勧めた。
アスファンディヤールはその言葉通り多くの国々に攻め入ってはアヴェスタを信奉させた。アスファンディヤールに敵意を抱いていたグラズムという戦士が彼の戦功をねたんでグシュタースプにアスファンディヤールは野心でいっぱいでペルシア帝国をわが物にするためグシュタースプも捕虜にしようとしていると讒言した。
グシュタースプはこれを聞いて腹を立て三日酒をあおったが四日目にジャーマースプにアスファンディヤールを連れてくるように言いつけた。アスファンディヤールの陣営につくとジャーマースプに父が自分に腹を立てている夢を見たと言った。それは正夢とジャーマースプは答えた。
怒られるような覚えのないアスファンディヤールは本国に帰る必要はないと言ったがジャーマースプは彼をなだめ、グシュタースプの館に連れ帰った。グシュタースプは息子になぜ自分をないがしろにするのか訪ねた。アスファンディヤールはいつまでも父の命令に従うと答えた。
これを聞くとグシュタースプは家来たちを振り返って、父の権力を狙る子にはどんな刑を施したら良いか聞いた。すると彼らは磔刑か鎖でつないで死ぬまで牢屋に閉じ込めると答えた。アスファンディヤールは父から王位を継ぐように言われたが考え次第で喜んでこれを辞めると言った。
しかしグシュタースプの怒りは収まらず、アスファンディヤールを鎖で縛り山の城の塔に押し込めた。アスファンディヤールに代わり遠征軍をすべていた子バーマンは父が監禁せられたと聞くと悲しみ恐れ軍隊を解散してバルクに行って、そこにいる兄弟と不運な父のことを語って嘆き悶えた。
これを聞いたアルジャースプは大軍を率いて攻めてきた。グシュタースプの軍が打ち負かされて山の中の城に隠れた。大臣のジャーマースプに星占いをさせると、アスファンディヤールだけがこの敗北を盛り返すことができると答えた。これを聞いて自分の行いを恥じてグラズムを鎖でつないで、アスファンディヤールを許すようにジャーマースプに言いつけた。
アスファンディヤールはそのことを信じずに自分が父に背き罰を受けたのにグラズムの言葉で縛り上げるはずはないと言った。ジャーマースプはもっともだと思いながらも現状を優先させてアスファンディヤールをなだめた。アスファンディヤールが父のもとに来るとグシュタースプは親切に迎えた。
再び彼を王の指揮官に任じグラズムをその面前に引き出して首を刎ねた。アスファンディヤールが大軍を擁して乗り出して来ると、チーン王に従っている悪魔族の闘士グルグサールが進み出て矢を放って、アスファンディヤールの鎧に当てたがアスファンディヤールは捕繩を奮ってグルグサールの首をとらえて、馬から引き下ろした。
戦争は広がりアスファンディヤールは百八十五人の優れた戦士を打ち取った。アルジャースプの軍勢は震えおののいて降参した。戦いがやんでグシュタースプの前に現れたアスファンディヤールの鎧には千本の矢が立っていた。グシュタースプは心から祝福した。
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後の七つの難業
アスファンディヤールの妹たちがチーン王アルジャースプの館に幽閉されていた。アスファンディヤールは、彼らを救い出すため遠征に行くためグルグサールを呼び出して、道案内をすればツーラーンかイランのうちで好きな土地を与えるが嘘をつくとひどい目に合わせると言った。
グルグサールは裏切らないと誓った。道は三つあり一つは美しい花園や牧場を通り三か月かかる。第二の道は景色はよくないが日数は二か月かかる。最後の道は僅か七日だが危険がある。と教えた。アスファンディヤールはしばらく考えて一番近い道を選んだ。グシュタースプに暇乞をしようとグルグサールを鎖でつないだ。
グシュタースプはアスファンディヤールに餞別に宝と一万二千の戦士を与えた。アスファンディヤールは弟のビシュータンと一緒に一万二千の戦士を従えて出発した。グルグサールは縛られて歩けないというので馬の背に括りつけて、一人の戦士に手綱を渡した。
グルグサールの案内で砂漠に入り大きな二匹の狼が飛び出してきた。戦士たちが矢を放ったが狼はびくともせず襲ってきた。アスファンディヤールはビシュータンに目配せしてそれぞれ一匹ずつ倒した。グルグサールに天佑によって障害がのぞかれたというとグルグサールは驚いたと答えた。
翌日アスファンディヤールはグルグサールに次の危険を訪ねると獅子が住んでいると答えた。日が暮れる頃に雌雄の獅子が出てきた。アスファンディヤールは弟にけがをさせまいと思って、一人で二匹立ち向かった。雄獅子をこぶしで、雌獅子を剣で倒した。
グルグサールに第二の危険も造作なく取り除いたというと冷ややかに自慢はまだ早い、次は山のように大きい体、周りに炎、顎は洞窟のよう、絶えず毒を含んだ泡を垂らしている龍が現れると教えた。アスファンディヤールは手ごわい敵と思ったので、乗り物に剣や槍を植え付けて、その下に車輪をつけた道具を造った。
道を進んでいるとグルグサールが龍の香がするといいアスファンディヤールは奇妙な乗り物に乗り込んで戸を閉めた。戦士たちはアスファンディヤールが進んで破滅の淵に入っていくように思い、悲嘆の声を挙げた。。アスファンディヤールは戦士たちをなだめて馬に鞭打ち進んだ。
龍は人間の香を嗅いで洞穴のような口を開いて馬ともども飲み込んだが槍や剣が上下の顎に突き刺さって口を閉じられないようになった。龍はやがて馬や乗り物を吐き出した。アスファンディヤールは、すかさず乗り物から飛び出し長剣を龍の頭脳に突き立てた。その後毒液により倒れて気を失った。
戦士たちは驚き慌てて、薔薇水を振りかけて、様々に介抱したところ息を吹き返した。気分がよくなってグルグサールに明日の危険を伺った。グルグサールは強力な妖術使いの女に出会うと言った。翌日、アスファンディヤールは旅を続けて牧場についた。牧場の小川のほとりに座り込んで酒を飲んだり肉を食べたりしていた。
そこに、乙女が醜悪な顔をした男を連れて傍に来た。乙女は妖術使いで連れの男は人間の屍を食う鬼の変装であった。乙女はアスファンディヤールに向かって、遠い国の王者の娘で隣の男がだまして館から連れ出して引っ張りまわされたと言って救ってくれと頼んだ。
アスファンディヤールは信じたふりをして傍に座るように言った。妖女は心の中でほくそえんで座ったが途端にアスファンディヤールは捕繩を投げて縛った。女は烈火のように怒って、様々な猛獣に姿を変えて脅したがびくともせずに剣で体を切り裂いた。連れの男がたちまち悪魔に変わり口から火を吐き襲って来た。
アスファンディヤールは炎に衣を焼かれながら、剣で首を切り落とした。そしてグルグサールに天佑でまた危難を乗り越えたと言った。グルグサールは腕前をほめて、明日は怪鳥シームルグに出会うと告げた。翌日シームルグの住んでいるところに来た。
シームルグは変な形の乗り物を見るとつかみかかったが槍や剣によって深傷を負って急に勢いが衰えた。アスファンディヤールは怪鳥シームルグを切り裂いた。そしてグルグサールに次はどうなるか訊ねた。明日は一層恐ろしく吹雪が降ると答えた。
戦士たちはこれを聞いて引き返そうと言い出した。アスファンディヤールはこれをなだめたがその言葉を耳に入れずに恨み言を言い出したので怒り自分ひとりで行くと言った。すると戦士たちは命ある限りお供をすると誓った。翌日の夕方山の裾に天幕を張っていたがやがて山の頂から嵐が降りてきて吹雪が始まった。
戦士たちは穴を掘って気を失ったようになって三日間うずくまった。四日目に雪が止んだ。アスファンディヤールはグルグサールに六番目の危難を凌いだことを言い次の危難を伺った。グルグサールは数里砂漠が続き水が一滴もないからすぐに引き返すように言った。
しかしアスファンディヤールは進み、翌日その砂原についたが砂は冷気を伝えるだけで少しも焼けていなかった。グルグサールにいうと昨日の吹雪で冷えたと言ったがアスファンディヤールは嘘をついていることを見破り脅したことを攻めた。そして戦士たちと足早に砂漠を横切った。
すると間もなく大きな川が目の前に現れたのでますます怒りグルグサールに水は一滴もないと言ったと嘘を責めた。グルグサールは誓いを立てたのに鎖につながれたことを厭い七番目の危難を大げさに話して引き返らせようとした。と白状した。アスファンディヤールは気の毒に思いグルグサールを鎖から解き放った。
大河を渡って、道を急いでいると四キロばかり向うに黄銅城の塔が現れた。一行は翌朝までそこに体を休めることにした。アスファンディヤールはグルグサールを呼びよせて、城の様子を訊ねたが難攻不落と答えた。アスファンディヤールは必ず城に攻め入りアルジャースプを生け捕りにしてペルシャに連れ帰ると言った。
グルグサールは旧主の身を案じ、人情のないことをするとおそろしい災難が訪れる、砂漠を墓場とすることになると罵った。アスファンディヤールは嘲罵の声を聞くとかっとなってグルグサールを真っ二つにした。
①荒涼たる砂漠で二匹の狼 ビシュータンとアスファンディヤールで一匹ずつ倒した
②雌雄の獅子 アスファンディヤール一人で雄獅子を拳の一撃で、雌獅子を剣で首を切り落とした。
③大きな龍 アスファンディヤールは乗り物に剣や槍を植え付けて龍の口に入り、口が閉じずに苦しむところを長剣で頭を刺した。その後毒に侵されて気を失ったが仲間の介抱により息を吹き返した。
④牧場付近の小川のほとりで食事中に妖女と人の屍を食う鬼 妖女の話術に乗ったふりをして捕繩でとらえ剣で切り裂いた。鬼も剣で切り裂いた。
⑤シームルグ 乗り物の利用して弱ったところを剣で真っ二つに切り裂いた。
⑥吹雪 穴を掘り三日間耐え忍んだ
⑦水のない熱い砂原 着くと少しも熱くなかった。鎖に繋がれて機嫌を損ねたグルグサールが嘘をついて引き返すように仕向けただけだった。
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黄銅城攻め
黄銅城付近に陣営を張ったアスファンディヤールは夜にまぎれて戦士たちと城の傍に忍び寄った。そしてあたりを見て回ったが黒鉄と黄銅でできていて攻め込むことができないように思われた。アスファンディヤールは失望し無法な遠征を企てたことを悔いた。
道に一人の行者が座っていたので熱心な口調で城の中の兵を訪ねた。行者は十万くらいはいるだろうと答えた。アスファンディヤールは武将たちを呼んで、相談したがみな帰国を主張した。アスファンディヤールは考えて商人に変装して城の中に入ろうと決心した。
弟のビシュータンにそのことを話して、駱駝百匹に紅玉、真珠緑玉、縫取をした着物などを二十四匹の背に積み、残り八十四には二つずつの箱を積みその中に戦士を一人ずつ忍ばせた。こうして百六十人の兵を忍ばせさらに百人の兵で荷物を持つ奴隷と駱駝馭者とに変装し出発した。
ビシュータンには城内に焔と煙が上がったら、兵どもを率いて攻めてくれと言い残した。ペルシアの商人が貴重な宝物をもってやってきたという噂が広がりアルジャースプはすぐに城の中に呼び込んだ。隊商の親方に姿を変えたアスファンディヤールは城の役人にカラードと名乗り王に献上品を持参したと言った。
こうしてアスファンディヤールは、特別に丁寧な待遇を受けてアルジャースプにいつでも会うことができるようになった。ある日王は彼にグルグサールが殺されことが真実か、グシュタースプ、アスファンディヤールは何をしているか訊ねた。商人の振りをしていたアスファンディヤールはグルグサールは知らないが、アスファンディヤールが七つの難所を超えて城を攻めようとしていると噂を聞いたと答えた。
アルジャースプはこれを聞くと嘲り笑って七つの難所は一人も生きてたどり着くことができないと言った。アスファンディヤールは商品の売り立てに立ち合いながら二人の妹を探していた。すると彼女らは厨房に水を運ぶ賤しい仕事に使い回されていることがわかった。彼女らはペルシアからは商人たちがきていることを聞くと父や兄弟たちの様子を訪ねようと思って、隊商の親方のところに行った。
アスファンディヤールは今素性を知られては面倒だと思ったので、顔をかくして何を聞かれても知らぬ知らぬと答えるだけだった。そして、帰るように促したが、妹たちは立ち去ろうとせずイランに帰ったら、グシュタースプの娘たちが遠い国でこき使われているのにどうして父や兄弟は安閑として日を送っていられるのでしょうねと言ってくれと頼んだ。
アスファンディヤールはほんとに忙しいんですよ早く帰ってくれと急き立てると妹たちはその声を聞き分けて喜んだ。そしてその場は何知らぬ顔をして立ち去ったが、夜になって訪ねてきて、話をして時の経つのを忘れた。アスファンディヤールは妹たちに、良い機会が来るまで、何食わぬ顔をして、いつものように水を運んでいるように固く戒めた。
アスファンディヤールは良い機会を作り出そうと思い、ある日アルジャースプに商売がうまくいったので明日は立派な饗宴を催してもてなそうと思うので王様がご臨席すれば光栄だと誘った。アルジャースプはこの招待を喜んで戦士たちと同席するといった。
アスファンディヤールは饗宴が賑わうように、城の一番高いところに天幕や小屋を設けて、盛んに火を燈したいと言った。アルジャースプは乗り気になり快く申し出を許してくれた。饗宴は朝から開かれ、アルジャースプも戦士たちも酒を飲み酔いつぶれてしまった。時分は良しと、アスファンディヤールは用意していた、夥しい木片に火をつけたので、たちまち濛々たる煙と炎々たる炎とが天に立ち上った。
それを見たビシュータンは合図に乗じて城門に押し寄せた。アルジャースプは敵軍が攻めてきたと聞いて、慌てて饗宴の席を退いた。そして息子のクーラムに五万の兵を授けて迎撃させ四万の兵に城を守るようにいいつけ、残る一万の兵に護身をさせた。
夜になるとアスファンディヤールは箱の蓋を開いて、百六十人の戦士を出して、これに甲冑や剣や槍を与えた。駱駝の馭者も戦士に変わった。アスファンディヤールは彼らを率いて、アルジャースプのもとに殺到した。不意打ちで敵は痛手を負った。そこにアルジャースプの妹たちが現れアルジャースプの居場所を教えた。
アスファンディヤールがアルジャースプの居場所に踏み込むとアルジャースプは跳ね起きて彼に組み付いた。酒に酔っていたアルジャースプは後ろに倒れかかったところアスファンディヤールが一撃で体を真っ二つにした。城の主人をなくしたクーラムの軍勢は急に力が抜けて、打ち破られた。
城の中か駆けだしたアスファンディヤールはクーラムを大地になげつけ首を切り落とした。この大勝の知らせがグシュタースプの許に届くと、彼は喜んでアスファンディヤールに新王国の統治をゆだねることにした。
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親子の反目
黄銅城を攻め落としたアスファンディヤールは父の館に引き上げてきた。彼ア七つの難業を語り出すと、グシュタースプは嫉みと疑いとで苦しみ悩むようになった。そして、アルジャースプを攻め落としたらペルシアの王位を譲るという約束をだんだんと引き延ばした。
アスファンディヤールはそれが不平で堪らなかったので母に自分の代わりに父に催促するように頼んだ。彼の母は用心深いため焦って父の機嫌を損ねると鎖に繋がれるから、気長に待っていればよいと戒めた。アスファンディヤールは母の言葉に満足することができなかったので、ある日酒に酔った風に父に約束を実行するように催促した。
グシュタースプはこれに対して急がなくても王位はお前のものになると答えた。心の中では我が子からの非難に立腹していたので、ジャーマースプにアスファンディヤールの運勢を占わせてみた。するとアスファンディヤールはすべての敵に打ち勝って、遂には七国の王者となると答えた。
これを聞いてグシュタースプは機嫌を悪くして、アスファンディヤールの死はどうやって起こるか聞いた。するとルスタムの矢によって死ぬと出た。グシュタースプは陰謀を胸に潜めて、饗宴を催し大勢の血族や戦士たちが集まって来るとアスファンディヤールの方を向いて褒めたたえた。
そして戦士たちの方を向いて、アルジャースプと戦った時にルスタムに助けを求めたが、応じず自分の領地に慢心してグシュタースプに使える必要はないと心得ているのでルスタムさえ片付けばアスファンディヤールに王位を譲ることができるといった。一座はグシュタースプの言葉に賛同した。
アスファンディヤールにルスタムを征服したら王位をゼンドアヴェスタにかけて誓うといった。しかしアスファンディヤールは父の言葉を信じずに二度の戦功の褒美が王位であったにもかかわらず、約束を破ったことを非難した。グシュタースプはこの非難の当たっていることを認めたがルスタムが怖いのかといった。
アスファンディヤールは怒りを抑えてルスタムの武勇は怖くないが彼を敵にする望みはなくカイアン王家に忠誠であったし、二年の間彼の貴賓として親切と友情を受けたのにそれを忘れて彼を敵とするのは決して正しくないと言った。グシュタースプはルスタムが自分の先祖に心を尽くしたことは知っているが自分にとっては何になるのか、彼は心おごり高ぶって、グシュタースプを蔑ろにしているからルスタムを縛って連れて来るならば王位を渡すと言った。
アスファンディヤールはそれを尚も嫌い父の計略を止めさせようとしたが、かたくなに聞き入れなかったためとうとう命令にしたがうことにした。それを知るとアスファンディヤールの母が駆けつけていくら父の命令でもルスタムのような世界の勇士がおめおめと捕まるわけがないしそんなことでザーブリスターンにでかけると名誉が汚れるからやめるように警告した。
アスファンディヤールは母の言葉が尤もだが、もう誓いをたてたためそれに従うといった。翌朝、アスファンディヤールは大軍でザーブリスターンへ進軍した。途中で先頭の駱駝が大地に寝て起きなかった。兵は悪い兆しと囁いた。ザーブリスターンに近づくとアスファンディヤールは長子のバーマンをルスタムに送って王者の儀式で自分を迎えるように伝えさせた。しかしルスタムはただ黙ったままだった。
それを見た父のザールはルスタムを呼んで、なぜ王子を歓待しないのか、いつもカイアン王朝に身命を捧げているのだから王子を連れてくるように言った。ルスタムはその言葉にしたがって、アスファンディヤールの陣営を訪れた。そして、館に迎え入れようとしたが、アスファンディヤールはそれを拒んでルスタムを縛って父のもとに連れていくのを許可してほしいと言った。
ルスタムはそれに応じなかった。二人は話を初めて、ルスタムは自分が代々のペルシア王の護衛として数えきれない敵を斥けて来たからおごり高ぶらないで館に入るように言った。アスファンディヤールは腹を立てて、匕首でルスタムを刺そうと思ったが抑えて軽蔑したように、左に座るように言った。
ルスタムは無礼を怒り、今までどんな偉い王者に対しても左に座ったことはないとアスファンディヤールの右に座った。アスファンディヤールは怒りだして、ルスタムの父ザールは悪魔の血を受けたもので祖父のサームは砂漠に捨てられて怪鳥シームルグに育てられたではないか。と言った。
これを聞くと、ルスタムは恥辱を感じて、ザールはサームの子でサームはナリーマンの子であり、ナリーマーンはホーシャングの後裔だから私もあなたも同じ先祖から出ている。イラン帝国がある時期自分に王権を揮うように勧めたがカイアン王朝への尊敬と愛着から断ったことを知らないのか、アルジャースプ一人を殺して鼻高々としているが、自分は何人もの王を殺した。と言った。
アスファンディヤールはこれを聞いてその場で怨みを晴らそうとしたが、ルスタムが一人で自分の陣営にきたことを思って胸の怒りを抑えつけた。そして、ルスタムの七つの難業が自分の七つの難業よりも大きかったのか、マーザンダラーンの攻略が自分の黄銅城よりも勇敢だったかと詰まった。
ルスタムは昂然としてアスファンディヤールは一万二千の兵に助けられて七つの難所を通ったが、自分は一人でそれをやった、カイ・クスラウが王冠をルーラースプに与えようとしたときファリーブルズを押し立てるものもいたが、自分たち親子はルーラースプに加担した。それでなかったら、今頃王子として威張ってないと罵った。
アスファンディヤールは堪り兼ねて、明日には兵にルスタムを縛らせるといった。ルスタムは真の勇士の戦いをみたことがない逆にアスファンディヤールを縛って父の館に連れていくといった。アスファンディヤールは日が暮れたため一緒にご馳走を食べようといった。
ルスタムは出された食事をすべてたべみな鯨飲馬食に驚いた。ルスタムは館に帰ると父ザールにアスファンディヤールと一騎打ちの勝負をすると伝えた。ザールは彼をなだめたがアスファンディヤールがルスタムの家系を侮辱したと従わなかった。翌朝、ルスタムは甲冑に身を固めてラクシュに跨った。
ザールはルスタムの弟ザワーラに兵の指揮を任せて助太刀の必要があるときは打って出るように言いつけ、神に心の悩みを取り去って平安な日々を恵んでくださいと祈った。ルスタムはザワーラにアスファンディヤールと一騎打ちをしている間少し離れたところで待っているように言い聞かせて一人でアスファンディヤールのところに行った。
ビシュータンはルスタムがただ一人で来るのを見て、自由にして父のもとに連れていく方がいいといったが、アスファンディヤールはルスタムが甲冑をつけていると言って武器をもって来るようにいった。それからビシュータンに軍勢を率いて少し離れたところに控えて助太刀の必要があるまで横やりを入れないように言って陣営を出た。
ルスタムとアスファンディヤールは戦いを始めた。初めは槍で渡り合いそれが折れて、剣をぬいて斬り合ったがそれも折れて、斧を振り回して戦った。この間にザワーラが勝負の長引くのにいらだって、イラン軍に臆病者打ってかかれと罵った。これを聞いてアスファンディヤールの末子ヌーシュ・アーザルが馬を乗り出して一騎打ちを望んだ。
ルスタムの楯持ちアルワーが迎えたが斬り倒された。それを見てザワーラが鉄の矛を府上げてヌーシュ・アーザルの頭をたたき馬からたたき落とした。バーマンはイラン軍が敗れかかったのを見るとアスファンディヤールの許にその由を知らせた。アスファンディヤールは大いに怒ってルスタムにだまし討ちをするとは卑怯だと責めた。
ルスタムは心を痛めて、自分は知らないと答え、これを証すためザワーラとファラーマルズを引き渡すといった。アスファンディヤールはルスタムの兄弟や息子を殺しても意味がないため彼らの代わりにルスタムを殺すといい続けざまに矢を射放った。ルスタムもラクシュも痛手を負った。ルスタムはよろめきながら陣営に引き返した。
アスファンディヤールは弟の屍を棺に納めて、情熱を込めた手紙と一緒に、父なるグシュタースプのもとに送った。ルスタムが陣営に戻ると、ザールがルスタムの傷をみて自分が年老いて不幸をみていることを悲しみ傷の手当をした。ルスタムは父に今まであんなに勇敢な戦士を見たことがない、夜が来たおかげで彼の手から免れたことを神に感謝する、明日は戦えないため戦場から引き退こうと思うといった。
ザールは自分や一族を生け捕りにするだろうと考えた。そして怪鳥シームルグが危難の時羽をやくように教えたことをいった。そして高いところでシームルグの羽を焼くとシームルグがやってきた。ザールはシームルグに賛美の歌を捧げて、ルスタムとラクシュを運んできた。シームルグは傷口を羽で撫でて、癒した。
ルスタムはシームルグにアスファンディヤールの一騎打ちに加勢を求めたが、聞き入れられないと答えアスファンディヤールのような英雄が現れたことはなく、彼の手から免れた方がいいと言った。ザールはルスタムが退いたら一家が縄目の恥辱を受けると言った。シームルグは黙り込んだが、ルスタムについてくるように促した。
ルスタムはラクシュにまたがってシームルグの後を追った。大きな河をわたって、蘆に囲まれている御柳の木立のところについた。そして羽でルスタムの目を撫で御柳の枝を火でまっすぐに伸ばして弓の矢をこしらえて、アスファンディヤールの目を射るようにいった。アスファンディヤールの体から血を流す者は生涯不幸につき纏われるといった。
ルスタムは心から喜んで、シームルグの体に接吻して御柳の枝を伐って館に帰った。彼は、怪鳥に教わった通りにして、一本の矢を造った。そして、夜が明けるのを待ち兼ねてラクシュに跨ってアスファンディヤールの陣営に押し寄せた。そして早く起きてルスタムの姿を見よと叫んだ。
アスファンディヤールはそれを聞いてビシュータンにルスタムは夜の間に死ぬと思ったこと、彼が包帯をしているか、ラクシュに跨っているか見るようにいった。ルスタムはビシュータンが来ると傷は癒えラクシュも元気であるといった。ビシュータンはルスタムが前の日にも増して颯爽たる姿でいるのを見ると兄にルスタムが元気で教の一騎打ちはルスタムが勝つだろうから仲直りをするようにいった。
しかしアスファンディヤールは馬の背にまたがりルスタムの前に駆けつけて、昨夜の傷がどうして治ったのか妖術でもない限り癒える筈はないと尋ねた。ルスタムは傷を受けても平気で自分の手でアスファンディヤールは死ぬ、早く自分の客人となるようにといった。
アスファンディヤール「ぜひともお前をくくり上げねばならぬ」ルスタム「思いとどまって、好きなものを私からとるがいい」アスファンディヤール「私にくれるものを持っているのか」ルスタム「千の宝玉、千の王冠、千の乙女、財宝もある」アスファンディヤール「父にルスタムを枷にかけて連れ帰ると誓った」ルスタム「あなたは王者の位欲しさに命を犠牲にするのか」
アスファンディヤールは堪り兼ねて弓を取り直して、ルスタムも弓をとって、御柳の矢をつがえ天を仰いで平和を望んで我慢をして血を流すことを避けようとしたが相手は申し出を斥けて私に縄目の恥を与えようとしているからこの矢がアスファンディヤールの眼に当たるようにして自分を罰しないでくださいと祈った。
途端にアスファンディヤールは矢を放った。ルスタムは身をかわし、御柳の矢を放ちアスファンディヤールの目にあたり、彼は大地に倒れた。ルスタムはその傍に駆け寄って、昨日はアスファンディヤールが百六十の矢を放ったが今日一矢で負けてしまったといった。
アスファンディヤールの子バーマンは父が倒れているのを見て泣き悲しんだ。弟のビシュータンも悲哀の面で歩み寄って来た。そして悄然としてアスファンディヤールを陣営に運んで行った。ルスタムは兵を連れて引き上げた。ザールは我が子の勝利がうれしかったがルスタムの運命を気遣って星占師によるとアスファンディヤールの命をとったものは自らも死なねばならぬことが心配だと告げた。
ルスタムは父にアスファンディヤールは自ら罪を招いたため自分の罪ではないと言った。翌日ザールとルスタムはアスファンディヤールの陣営を訪ねた。傷に悩む王子を慰めるとアスファンディヤールはこの不幸は自分の運命だ、息子のバーマンを守り王者にふさわしいすべての武技学芸を仕込んで欲しいと言った。
ルスタムは感激に燃えて、バーマンを王者の位に付けるのは自分ひとりの責務でなければならないといった。アスファンディヤールは弱って行き、運命が死の穴に追い込み父の増悪の犠牲となったと言って息を引き取った。イランの戦士たちは不幸な主君の屍を守って国に引き返していった。
グシュタースプの館に棺が担ぎ込まれると王は悲痛のあまり泣き悲しんだ。母は次第に大きくなる栄光からもぎ取られた。これはザールやルスタムのせいではなくシームルグのせいといった。イランの戦士たちはグシュタースプが玉座にいつまでもいて約束を破ったせいで息子を殺してしまったと言って憎んだ。
王もその心を悟って葬儀が住むまで館に閉じ籠っていた。ルスタムはアスファンディヤールの遺言にしたがって、バーマンをザーブリスターンに連れ帰った。弟ザワーラは腹を建てて、敵の子を教え育てることをやめるように言った。ルスタムはアスファンディヤールとの制約を厳然と守ると答え王として戦士としての一切の技を教え込むことに心を砕いた。
それからグシュタースプに手紙を送って、アスファンディヤールの遺言によって、バーマンの教育を成し遂げたことを告げ今後の指示を仰いだ。グシュタースプとビシュータンはルスタムの義心に感じて無罪としてバーマンを呼び迎えた。王は心から喜んでアスファンディヤールそっくりで光栄ある父のいない今自分の側にいるように言って聞かせた。
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大勇士の最後
老戦士ザールが一人の侍女を愛して、シャガードという男の子を生んだ。シャガードが生まれたとき星占師はこの子が一族を絶やすと予言した。これを聞いたすべての人々が驚き悲しんで、神に子供の心を浄めて光栄ある旧家を破滅から救ってくださいと祈った。シャガードが一人前の男となると、カーブル王の娘と結婚した。
カーブルはルスタムの領地の一部であり年貢を受け取るために毎年訪れていた。ある年、いつもよりも多くの税を取り立てた。カーブルの王はそれを恨んで、シャガードに不平を鳴らすと相づちを打ち、ルスタムが自分の兄弟なのに尊敬をあらわさないことを怨み死をもって罰しようと思うといった。
カーブル王をこれを聞いて、乗り気になりどうやってそうするか尋ねた。シャガードは邪悪な笑みを浮かべてカーブル王に自分が侮辱され父に訴えに行き仕返しにカーブルに来たところたくさんの剣を植え付けた落とし穴を造り狩りにおびき出して罠にはめると話した。王はすぐにこの策略に賛同して、饗宴を催した。
そして、シャガードがわざと王の悪口を言って王も怒ったふりをして、戦士の前でシャガードを卑しい女の腹から生まれたので父や兄ルスタムが奴隷のように扱っている成上り者といった。シャガードは顔色を変えて飛び出しザーブリスターンにきて、カーブル王に罵られたとルスタムに訴えるとルスタムは同情して、無礼をせめてカーブルの王位から引きずり下ろすといった。
ルスタムはシャガードと一緒にカーブルにやってきて、カーブル王は彼を迎えて言葉を卑しくして、自分の罪を許してくださいと哀願した。ルスタムの気をやわらげるとカーブル王は日夜華やかな饗宴を開いてできるだけ尊敬して歓待した。一方では落とし穴を掘らせている。
ある日、カーブル王はルスタムを狩猟に招待した。ルスタムは喜んでこれに応じてラクシュに跨った。シャガードはルスタムに疑念を起こさせないように、絶えず傍に付き添った。森の中に来ると、ラクシュがぴたりと止まった。ルスタムは煽ったが踏み出さなかった。とうとうルスタムが怒り殴った。
ラクシュは殴られて前へのめると、ラクシュは主人を乗せたまま深い落とし穴に堕ち込んでしまった。馬も乗り手も剣に痛手を負った。ラクシュは主人の一大事と空に向けて跳躍し穴から抜け出したが、また他の落とし穴に堕ち、また穴から飛び上がるとまた別の落とし穴に堕ちた。
彼らは七度抜け出して七度落ち込んだ。七度目に飛び上がると力が尽きてしまい倒れ伏した。ルスタムはシャガードによって騙されたことを悟った。のこのこと歩み寄ったシャガードを睨み兄弟である自分をなぜ滅ぼそうとするのか詰まった。シャガードはルスタムが流した血のために神がこの復讐を命じたと答えた。
そこにカーブル王がやってきてルスタムに同情したようにあなたは今死んではならぬ身体で薬を持ってくることにしようと言った。ルスタムは偽りの申し出を嘲り退けてこんなだまし討ちは人間のすることではない、勇敢なファラーマルズが返報をすると叫んだ。それからシャガードの方を向いて、変わり果てた声で死期が近づいたから弓矢をもってきてほしい、獣に体を食われたくはないから弓矢をもって死にたいと言った。
シャガードは首尾よくおのが目的を遂げたことに憂目を覚え、何の気なく弓矢をルスタムに渡した。凶悪な満足でにやにやしているとルスタムは弓に矢をつがえてシャガードに狙いをつけた。シャガードは驚き恐れて大きな樹の蔭に隠れたが、ルスタムの矢は樹の幹を貫いてシャガードを串刺しにした。
ルスタムは目を空に向けて、偉大なる神に卑怯な殺害者に返報をできたことを感謝し息の根を引き取った。ザーブリスターンのザールのもとに悲報が伝わると、彼は衣を裂き、白髪をかきむしって「なんという悲しみだろう。なぜ私はルスタムの代わりに死ななかったろう」と叫んだ。
彼は孫のファラーマルズを遣って、ルスタムの亡骸を引き取らせた。それからカーブルに攻め入って、卑怯な王を捕虜にして死刑に処した。
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